「私たちはアイドルとして売れなかったものですから、なかなか歌う機会がなかった。今日はヒット曲を嫉妬曲に代えて歌いたい」
笑いを交えて力強くこう語ったのは「アイドル83年組」のひとりである松本明子だった。1983年にアイドル歌手デビューした大沢逸美、桑田靖子、小林千絵、木元ゆうこ、森尾由美、そして松本が9月29日、東京・博品館劇場で「40周年イベント83年組アイドル不作と言われた私たち『お神セブン』再結集!」と題してライブを開催したのだ(徳丸純子はVTR出演)。
とにかく83年組が比較されるのは「花の82年組」。なにしろ中森明菜、松本伊代、早見優、堀ちえみ、小泉今日子といった超強力なメンバーだ。1984年にも荻野目洋子、菊池桃子といったスーパーアイドルがデビューしたが、83年は際立ったアイドルが誕生しなかったことから、いつの間にか「不作の83年組」と呼ばれることになる。
とはいえ、古参の芸能記者は、他にはない魅力を次のように力説した。
「いわゆる不作と呼ばれる理由に、印象に残るヒット曲がないことが挙げられます。ただ、太田貴子は異質な存在でした。自身が主演声優を務め、83年から84年に放送されたアニメ番組『魔法の天使クリィミーマミ』の主題歌『デリケートに好きして』で歌手デビューした。この楽曲を推すファンは根強く存在し、2009年にセルフカバー版として『デリケートに好きして(21st century ver.)』をリリース。さらに2021年には『デリケートに好きして/魔法β』として再リリースされたほどです。篠原ともえ、浜田翔子など数多くのタレント、アーティストにカバーされた、愛すべき楽曲ですよ」
この芸能記者はさらに、個性派ぞろいの面々だったとして、
「伊藤麻衣子(現・いとうまいこ)や武田久美子もいましたね。シングル『微熱かナ』でデビューした伊藤は、大ヒットドラマ『不良少女と呼ばれて』で主演女優となりました。『噂になってもい』で歌手デビューした武田は、のちにグラビア界に一石を投じることになった、あの衝撃的な『貝殻水着』が一世風靡しました」
確かに彼女たちのファンが聞けば「不作と呼ぶな」の声が聞こえてきそうである。
(所ひで/ユーチューブライター)