「子供が見ています。ルールを守りましょう」
そう言ったジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦の言葉と、会場の気味悪い拍手はなんだったのか。NHKは10月4日19時のニュースのトップで、次のように報じた。
「ジャニー喜多川氏の性加害の問題をめぐり、ジャニーズ事務所が2日に記者会見を開いた際、事務所から会見の運営を任されていた会社側が、複数の記者やフリージャーナリストの名前や写真を載せて質問の指名をしないようにする『NGリスト』を会場に持参していたことが、関係者への取材でわかりました」
判明しているだけでおよそ500人に及ぶ被害者を出し、本来なら被疑者死亡で直ちに書類送検されるべき性犯罪者に関連した記者会見。それなのに、設けられた質疑応答はわずか2時間弱。しかも特定の女性記者が延々と持論を喋り続ける「時間稼ぎ」まがいの行為まで許していた。
会見の司会は素人相手の進行に慣れている「NHKのど自慢」の松本和也元アナ。にもかかわらず、なぜか進行はグダグダで、記者から怒号が飛ぶ混乱ぶり。イベント事情に詳しい広告代理店関係者が言う。
「体調が芳しくなくNHKを退社し、フリーランスになった松本さんには気の毒な司会でした。松本さんに不手際があったわけではないのに、指名をめぐって記者たちがマイクなしで次々に大声で喋り出し、会見は一時、収拾がつかなくなっていました。あれでは松本さんの技量を疑問視されかねない。代わりに古巣のNHKが運営会社の『仕込み』を暴いたのは痛快でした」
同日、ジャニーズ事務所は、会見を委託した外資系PR会社との契約解除を考えている、と発表した。同時に、外資系PR会社について次のようなコメントを出している。
〈会見前々日の会議で、本件について打ち合わせが行われた際、媒体リストを持ってこられて、そこにNGと書いてあったので、井ノ原が『これどういう意味ですか? 絶対当てないとダメですよ』と言いました。するとPR会社が『では前半ではなく後半で当てるようにします』と答えました〉
つまりジャニーズ側はNGリストとは無関係だが、NGリストの存在はこの時点で認識しており、「後半で当てる」ことは暗に了承したかのように見える。2時間という制限がある会見では、後半になれば時間切れで当てられないメディアが出る可能性がある。NG指定されたメディアは「後半」という口実の下でそうした扱いを受け、結果として意図的に排除されていたかもしれないのだ。
「次にジャニーズ事務所の会見を請け負ったこのPR会社が、事情説明の会見をきちんと開くのかどうか」
と前出の代理店関係者は訝しんだ上で、こう続けるのだ。
「新会社設立の会見だったにもかかわらず、NGリストを作成していたとすれば、それが会見運営会社の忖度だったとしても、いらぬ憶測を呼びます。会見に出席した東山紀之社長、井ノ原副社長と弁護士2人の言うことを、メディアもスポンサーも信用しなくなる。新会社設立はスタートラインから大失敗です。特に井ノ原さんが言っていた『会見を見ていた子供たち』、ジャニーズJr.やレッスン生の子供の心が離れていくのは決定的では…」
こんな「ヤラセ会見」で、ルールを守っていなかったのはどっちだったのか…。