9月26日、船橋競馬第6回、2日目。7R終了後に向かったのは、2階のデッキエリアだ。スタンドを改修中で、飲食店がここに引っ越している。
「あの焼鳥屋さん、うまそうだね」と言うと「人気店なんですよ」と同行した「船橋の主」ジャイアン。店主が一心不乱に串をひっくり返している。ひとつひとつが大きくて、焼き色がいい。白もつ、レバー、豚ナンコツ、ハツ、タン、豚串の6種類。売り切れのハツ以外を1本ずつ食べる。
焼き台の端にトロットロの煮込みの鍋が見え、これも実に旨そうだ。すぐに煮込みを追加注文する。食べ物があると手を出さずにいられない、愚食家の血が騒ぎます。一気食いしてから、煮込みの汁が残っているのを見たジャイアンが、
「この汁がおいしいので、もつ煮込丼を頼む人も多いんです」
さすが船橋通だ。
デッキ横にローマのコロッセオのようなパドックがある。すり鉢型になっていて、階段を降りて見てもいいし、上から見下ろすこともできるので、出走馬を一望できる。ナイター照明が輝くと、正面のスクリーンに映し出される馬がツヤツヤしている。「どれもよく見えるねぇ」と独り言を言うと「頭の上げ下げや落ち着いているかどうかで見るんだよ」とアドバイスしてくれたのは、隣りにいたおじさんだ。
8Rは2歳、トーシンブリザード・メモリアル、左回り、1600メートル、9頭立て。このレースはジャイアンの法則に従う。船橋の人気者・森泰斗騎手が乗っているレースは、本橋孝太騎手が来ないーー。
森騎乗の⑦バハマフレイバーは、スピードが抜けている。本橋騎乗は②ネイサン。⑦は前々走2着、前走1着と優秀で、1番人気に推されている。高配当を狙って⑦と⑥プラズマが1着のフォーメーション馬券。3連単⑦⑥⑧4450円が的中だ。人気薄だった②は4着に敗れた。ジャイアンの法則通りの着順だ。
9RはYJS(ヤングジョッキーズシリーズ)トライアルラウンド船橋第2戦。左回り、C2、選抜馬、1800メートル、フルゲートの14頭立てだ。地元の木間塚龍馬騎乗の馬と3頭、計4頭が1着のフォーメーション馬券を買ったが、1着の③がなく、ドボン。やはりYJSは難しい。
2着は大井競馬所属の大木天翔騎乗の馬だが、7RのYJSを勝ったのが大木騎手の馬だった。8月に盛岡競馬に出かけた時もYJSの2レースが組まれていたが、JRAの永野猛蔵騎手の2連勝だった。勢いがある騎手を狙う。それがYJSの法則かもしれない。
12頭立ての10Rは8番人気の1着で、3連単は46万円の超万馬券。
そして11Rは長月特別、B1、左回り、1600メートル、8頭立て。ここは森騎乗の1番人気①クラーベドラドから。穴を狙って6番人気の木間塚騎乗⑥レディオスターからも。ジャイアンは「おかみ」と言っている御神本(みかもと)訓史騎手の⑧マイブレイブから。
結果は①の楽勝、3連単①④②2820円だった。ちょい浮きのゲット。この日は4安打で終了した。ここが庭だと言っているジャイアンは無言…。
「で、これからどうしますか、僕の行きつけの店もありますが、石田純一さんがやっている焼肉屋が船橋の駅前にありますけど」
「石田純一が船橋で店をやっているの? 行こう、そこ、行こう」
聞けば、店は石田さんとTBSの名物アナウンサーだった山本文郎さんの未亡人が共同で経営しているという。山本さんが31歳下の由美子さんと再婚したのは2008年。再婚は先輩記者がスクープしたのだが、当時は名物アナの年の差婚として、大きな話題にもなった。
店名は「炭火焼き肉 ジュンチャン」。店に着くと、外で石田さんが立ち話をしていた。店内で石田さんに名刺を出して挨拶をすると「わざわざ船橋まで?」と言われたので、「いやいや、船橋競馬です」と答えて談笑になった。石田さんにオススメも教えてもらった。
上ミノ、上タンは分厚い。それからサガリ、ツラミ、赤身…。コムタンクッパも旨い。由美子さんと厨房をあずかる息子の賢人さんにも挨拶すると、由美子さんは「その節はお世話になりました」と感激の様子だった。その場で改めての取材もお願いした。
「ギャンブルをやると、何が起きるかわからない。それが楽しいんだよ」
ギャンブル行脚の醍醐味を味わった1日だった。
(峯田淳/コラムニスト)