自民党が衆院大阪選挙区の劣勢を挽回すべく、「切り札」として擁立したのは演歌歌手の尾形大作だが、早くも悪評プンプン。地元からは「今からでも差し替えるべき」(自民党大阪府連関係者)との声が上がっている。
尾形は昨年夏の参院選で、同じく演歌歌手の中条きよし氏が日本維新の会から出馬し、当選したことをヒントに、自身も地元福岡から維新の候補として、衆院選で出馬しようとした。ところが本人が「歌の仕事で政治のことはほとんどわかりません」と公言するように「政治は素人」のため、あっさり書類選考で落とされてしまった。
そこで、どこか空いている選挙区がないか探していたところ、自民党が大阪で公認候補を差し替えると聞いて応募したところ、大阪18区(岸和田市、泉大津市など)での立候補がトントン拍子で決まったのである。
尾形は発表の際の記者会見で「命懸けで頑張ります」とは言ったが、「明日は東京近郊で公演がありますので」と、地元回りよりも歌手業を優先している。NHK紅白歌合戦に出場したことがあり、知名度があると思っているのかもしれないが、ヒット曲「無錫旅情」は昭和61年(1986年)の作品。ほぼ一発屋だったため、多くの人からは忘れ去られている存在だ。先の自民党大阪府連関係者が憤る。
「岸和田に縁もゆかりもないなら、徹底的に地元活動をしないといけないのに、何のために公募したのか」
怒りの矛先は、支部長の刷新を図って最終的に尾形擁立を決めた茂木敏充幹事長や、尾形の事実上の「後見人」として秘書を派遣している西村康稔経産相へと向かう。
自民党は2年前の衆院選で、候補者を出した15選挙区で維新に全敗し、比例復活当選は2人だけだった。尾形のような候補者に足を引っ張られ、このままでは次期衆院選でさらに厳しい結果が待ち受けることだろう。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)