藤井聡太竜王・名人が八冠になって初の防衛戦、10月17日の竜王戦第2局1日目が始まった頃、X(旧Twitter)上のあるつぶやきが、ユーザーの爆笑をさらった。つぶやきの主は、元女優で日本将棋連盟・羽生善治会長の理恵夫人のアカウントだ。
〈先日、藤井聡太八冠が「自分を応援してくださる方は親世代の女性で実際には将棋を指されない方も多いと聞いています。なのでいつか将棋というものを観る将から指す将になってご家族で楽しんでもらえたら…はい…とても…いいなと…はい…」と話されてました。ご報告まで〉
恐縮しながら藤井八冠が話す様子が目に浮かぶ。そして藤井八冠のそうしたところが母親世代の女性ウケを誘発するのだろう。
理恵夫人のアカウントにX公式マークはついておらず、普段は羽生一家が飼育しているウサギの話題が中心だ。東京と大阪の将棋会館建設費を集めるクラウドファンドでも、内助の功を発揮。藤井八冠が誕生した際も、多忙な羽生会長に代わってコメントを出していた。
藤井八冠の躍進と共にネット中継やYouTube解説、さらに八大会の主催社である各新聞社ブログもパワーアップし、将棋の指し方を知らない人でも藤井八冠の将棋観戦が楽しめるようになった。AIが次の手を予測してくれるし、先の王座戦のように「勝率1%がわずか1手で勝率91%」に大逆転する、かくも熾烈で劇的な戦況も登場。解説もわかりやすく、将棋を始めたばかりの小学生や中学生、主婦もなるほどと思える。
おまけに藤井八冠が選ぶおやつは、いわゆる「女性ならみんな好きでしょ」系スイーツ。ババロアを名古屋コーチン卵のプリンで包んだぴよりんや、チョコレート味のクマちゃんケーキは目にも楽しく、藤井八冠が頼む全国各地のご当地ショートケーキとモンブランは、旅情をかきたてられる。
仁和寺で繰り広げられた竜王戦第2局第1日目、藤井竜王と伊藤匠七段が選んだおやつはそれぞれ「京の秋の冨喜寄」と「フルーツ盛り合わせ」。前日の会見で「京都なので和菓子を楽しみたい」と宣言した通り、黒胡麻入りの重みがあるこし餡を羽二重餅で包んだ「西陣風味」や、菊の花を模したきんとんの「菊寿」、紅葉の干菓子を詰め合わせた千本玉壽軒(京都市上京区)の「冨喜寄」をチョイスした。
京都に限ってはどこの甘味処も行列ができているが、全国的には洋菓子に押され気味の和菓子。「藤井八冠効果」で和菓子人気が盛り返すと面白いのだが。
(那須優子)