外務省「チャイナスクール」の垂秀夫・駐中国大使が近く離任し、後任には金杉憲治・駐インドネシア大使が就く。
金杉氏は昭和58年入省。垂氏は昭和60年と、年次が逆転する。中国大使は駐米大使などと並ぶ重要ポストではあるが、日中関係が厳しさを増す中、なかなかなり手がいないのも事実だ。中国語を研修言語とするチャイナスクールではないものの、アジア大洋州局長を務めた経験豊かな金杉氏を充てることにしたのだろう。
垂氏はメディア報道では「対中強硬派」となっている。確かに中国を知り尽くしている立場から、現在の中国には厳しい視線を注いでいるということはあるだろう。
ただ同時に、日本の政界でも最も親中派である二階俊博元幹事長に食い込んで、二階氏から最も信頼されている外務官僚であるのも事実だ。
垂氏は外務省官房総務課長時代の2015年5月、二階氏の3000人訪中団の手伝いをした。自民党関係者が振り返る。
「3000人と打ち上げたものの、そんなに人数も集まらず困っていたところ、助けてくれたのが垂氏だった」
北京の人民大会堂で開かれた日中観光交流イベントには、サプライズで習近平国家主席も出席。二階氏は安倍晋三総理(当時)の親書を習主席に手渡すなど、「日中関係に二階あり」と大いに名をあげた。そのお膳立てをしたのが垂氏だったというわけだ。
二階氏は現在、日中友好議員連盟会長を務め、日中関係改善に意欲を見せている。垂氏は再び訪中の手伝いをすることを期待されているが、東京電力福島第一原発からの処理水海洋放出などをめぐって対立する、日中関係の改善は容易ではない。11月のアメリカでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)を利用しての日中首脳会談が開催できないか、日本側は模索しているが、それが垂氏の大使としての最後の大仕事になりそうだ。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)