所得税減税をめぐる一連の動きで、岸田政権の基盤が揺らいでいる。あからさまな選挙対策に国民が怒り、消費税減税の重い窯の蓋まで開きつつある。与党内からは「2024年度予算編成を終えたら、首相交代」という声まで出ている。
所得税減税、年末解散というシナリオが崩れ、衆院選挙をすれば与党敗北は必至。思い切って消費税減税を決断し、予算編成後に破れかぶれ解散という手段を、岸田文雄首相は選択するか――。
所得税減税の詳細はまだ検討中だが、4万円の減税策を軸とし、1人あたりで所得税3万円、住民税1万円、非課税世帯に7万円給付と、それぞれ定額での案が有力とされている。
これに対し、自民党の世耕弘成参院幹事長は10月25日、参院本会議での代表質問で、公然と岸田批判を展開。いわく、
「物価高に対応して、岸田文雄首相が何をやろうとしているのか、まったく伝わらなかった」
舌鋒鋭い自民党の石破茂元幹事長も、次のようにダメ出ししている。
「正しいと思わない。それよりは基幹3税(所得税、法人税、消費税)の増収分をきちんと防衛費や少子化対策に充てることだ。それは次の時代にもプラスになることで、納税者の理解は得られる」
岸田政権は年3兆円の少子化対策を打つが、2026年から社会保険料が月500円程度、負担増となる見込みだ。防衛増税も予定されており、SNSでは「増税を隠すための選挙目当て減税」との批判の方が圧倒的だ。
また、非課税世帯には7万円の給付で調整されていることから、「結局は年金生活者、高齢者だけいい目をみる」との批判が30代、40代の働き盛り世代から出ている。
目先の減税で喜ぶほど、国民は甘くない。結局は旧来からの自民党支持層、高齢化が進む創価学会員のフトコロに入るだけと、冷静に分析しているのだ。
あるエコノミストは日経新聞電子版に、次のようにコメントしている。
「全体で5兆円規模の減税となることを想定し、内閣府のマクロ経済モデルで試算すると、所得減税は実質GDPを+0.18%程度押し上げる。5兆円を消費減税で還元すると仮定すれば、実質GDPは+0.39%程度押し上げられる。所得減税の2倍以上の効果」
経済学的にも効果は薄いわけだ。
そしてここにきて「週刊文春」の女性問題報道によって、山田太郎文部科学政務官が10月25日に辞表を提出した。政権基盤はガタガタだ。自民党中堅議員が言う。
「時限的な消費税減税に誘導し、その是非を問う形での総選挙にもっていけば、選挙に勝てるし、政権も延命できる。岸田首相が意地を張れば、政局だ」
人の話を「聞く力」を自慢する岸田首相が、国民や識者のホンネをどこまで聞くことになるか。
(健田ミナミ)