日本サッカー協会(JFA)の次期会長選がスタートした。会長立候補を希望して手を挙げたのが元日本代表主将のツネさまこと宮本恒靖氏で、今年からJFA現職の専務理事の要職にある。
もう一人は鈴木徳昭氏。J1横浜Mの前身である日産自動車サッカー部のマネジャーからドーハの悲劇で涙を飲んだオフトジャパンの通訳を務め、2002年サッカーW杯(日韓大会)、21年東京五輪など、日本で開催された国際大会の事務局などでそのキャリアを重ねてきた。
一方、JFA内部では自身で2度、日本代表をW杯に連れて行ったJFA岡田武史副会長に対する立候補を望む声が大きかったが、
「岡田さんはJ3今治のオーナーとして総額40億円の資金を準備してスタジアムを建設しました。JFA会長になれば今治から離れなくてはならない」(サッカー担当記者)
との事情から立候補する意思が全くなかった。
立候補を希望している2人は、これから79人いるJFA評議員から16人以上「推薦」を受けなければいけないのだが、「2人ともインパクトに欠けますよね」(JFA関係者)という声ばかり聞こえてくるが実情。
実は宮本氏の「後見人」は、JFA田嶋幸三・現会長だ。
「田嶋会長は宮本をJFAの役員に引っ張った。ただ、宮本本人は何をしたいのか、JFAを今後どう導きたいのが全くわからない。もし会長に決まったら田嶋さんの『院政』は間違いない状況です」(前出・サッカー担当記者)
また、世間的に全く知名度がない鈴木氏だが、組織の参謀役としてはこれまで多くの実績を上げてきた。ただ、鈴木氏は慶大のOB。Jリーグでは野々村芳和チェアマンも慶大出身だが、「鈴木会長」が誕生すればJFA内部の勢力図は一気に塗り変わることになる。
今まではJFAといえば、古河電工、三菱重工、日立の東京丸の内に本社がある「丸の内御三家」の出身者が会長の椅子に座ってきた。田嶋現会長、そしてJリーグの創設者、川淵三郎氏も古河OBだ。それが一気に「慶大閥」の地位が上がる可能性が出てくるわけで、JFA幹部は、
「鈴木氏の会長選立候補は全くの寝耳に水。なぜ彼がJFAのトップを目指そうと思ったのがわからない」
と苦笑いしていた。
田嶋会長の「院政」か、慶應閥がのし上がるか。いずれにせよ魑魅魍魎の展開が待ち受けている。
(小田龍司)