国民民主党の玉木雄一郎代表のXが大炎上中だ。
火種となったのは11月1日付の投稿で、現役世代の給料の値上げ以上に社会保険料が値上がりしていることに触れ、
〈医療費の伸びを賃金上昇率以下に抑えるために診療報酬を抑制する〉
〈極めてザクっと言うと、お医者さんの給料や所得の伸びを、サラリーマンの賃金の伸び以下に抑える〉
〈それは業界団体からの反発は凄まじく、なかなか簡単なことではありませんし自民党にはできません。皆さんの応援が必要です〉
そう書いたところ、年収3000万円以上を約束された医師達から脅しとも取れる批判が相次ぎ、投稿を削除する事態になったのである。ある麻酔科医(自称)は「医療用麻薬」の写真をアップし、
〈俺達が(麻薬を)横流ししないのは〉
〈一時的に得られる金額が、定期的な年収と比べて割に合わないから〉
〈医療麻薬横流しの、安全装置を外そうとされている?〉
なんと、医師の給料を減らすなら麻薬を密売する、という脅しに転じたのだ。こうした不遜な態度こそが「医者の給料は高すぎる」と国民の怒りを買っている自覚もない。
これは極論としても、医師達の反論は総じて「医者の給料を下げまくると、市場原理で優秀な人が医学部に入らなくなって医療の質が下がる」というものだ。医者の給料を下げると医療の質が下がる…これは事実だろうか。
小児科や産科、外科領域を除けば、医師は遅かれ早かれ、人工知能にとって代わられる。むしろ医師の給料を減らし、日本発の「人工知能が診断、処方するシステム」開発費用にあてれば、人工知能技術を海外に輸出できる。医師は我々の命を守る一方、社会保険料負担を増やして生活を苦しめる存在だが、人工知能は富を産む。
人工知能なら、老人本人が希望しない苦痛と管だらけの延命治療を、金儲けのために強引に勧めることもないし、発熱患者の診療を断ることもない。コロナ陽性というだけで高齢者や障害者を救急搬送し、二度と歩けないほど足腰を弱らせることもない。
医師とともに働く看護師や薬剤師、製薬企業職員の給料は、とっくの昔に目減りしている。実体験で言えば、2006年当時の看護師の夜勤アルバイトは、日当6万円。2023年現在は、自分で歩くこともできない高齢者や体重100キロ以上の入院患者が増え、業務内容はより過酷になっているのに、日当は2万円まで下げられた。
ブラック高齢者施設、ブラック保育園ともなれば、看護師の時給は1400円。場合によってはファミリーレストランの時給より安い。
それほど国が貧しくなっているのだから、医師だけが「収入減らすな」はもう、国民の理解は得られない。
武見敬三厚労相の父親「日本医師会の天皇」と言われた故・武見太郎元日本医師会会長は、
「日本の医者でマトモなのは3分の1だけ。残りの3分の1は何も考えていないノンポリ、3分の1は欲張り村の村長さん」
「金儲けに走るから開業医が中小病院を経営するのは反対」
と、日本の医師達をかつて断罪した。欲張り村の村長を排除しなければ、いずれ健康保険制度と年金制度、医療システムは破綻するのだと、平均寿命が男性65歳、女性70歳だった1960年代当時から危惧していたのだ。
玉木代表の発言は医師の反発を買ったものの、Xでは「医者の給料」が投稿後24時間経過しても、堂々のトレンド1位を爆進した。
増税クソメガネの「減税策」が「減税ウソメガネ」と言われて霞むほど、「医者の給料減らせ」というパワーワードの方が、納税者に刺さったようだ。
(那須優子/医療ジャーナリスト)