人気バンド「アリス」のメンバーで、シンガーソングライターの谷村新司氏が10月8日に死去した。氏は、23年春頃に「急性腸炎」の手術を受けて療養を続けていたという。谷村氏を苦しめた「急性腸炎」とは一体どのような病気なのか。
これは、細菌やウイルス感染、暴飲暴食、アレルギーなどが原因で腸に炎症が起こり、腹痛や嘔吐などに見舞われる病気だ。ストレスとも密接な関係があることが報告されている。腸管にある神経は、自律神経でつながっていて、脳神経と大きな関わりがある。そのため、脳が過大なストレスにさらされると自律神経から腸に伝わり発症するケースも。「急性腸炎」は「感染性腸炎」と「非感染性腸炎」に分類される。
「感染性腸炎」は、腸に細菌・ウイルス・原虫・寄生虫・真菌などが感染することで発症する。経口感染が多く、症状は腹痛、下痢、嘔吐、発熱だ。感染したウイルスによって症状に違いがあることも特徴だ。
「非感染性腸炎」は、ウイルスや細菌などの感染が原因の腸炎ではないため、他人に感染させる心配はない。食物が原因の「アレルギー性腸炎」、ステロイドや抗生物質などが原因の「薬剤性腸炎」、動脈硬化が原因の「虚血性腸炎」などが主な病気だ。
これは何らかの原因で突然、大腸に向かう血管の血流障害が起きることで発症する。主な症状は腹痛や血便だ。中高年以上の人に発症しやすく、高血圧や糖尿病、脂質異常症の人は注意が必要だ。特に動脈硬化が進んでいる場合は発症しやすいと言われている。
「急性腸炎」は、症状が軽い場合では自宅療養でも回復することが多いが、重症化するケースも少なくない。特に小さい子供や高齢者は発症したら医療機関の受診が必要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。