金正恩総書記率いる北朝鮮が、在外公館を相次いで閉鎖し始めている。
事態が表面化したのはつい最近のことで、10月中旬に「香港総領事館」の閉鎖が明るみに出たのに続き、10月末にはアフリカの「ウガンダ大使館」と「アンゴラ大使館」、さらにはヨーロッパの「スペイン大使館」の閉鎖も明らかになった。
一連の閉鎖で各国、各地域に53カ所あった北朝鮮の在外公館は、49カ所へと減少。北朝鮮の内情に詳しい各国、各地域の外交筋などの情報を総合すると、今後さらに閉鎖される在外公館は、少なくとも十数カ所に上るとみられている。
ここへ来て、北朝鮮が在外公館の相次ぐ閉鎖に乗り出したのはなぜなのか。北朝鮮外務省は「変化する国際環境と外交政策により撤収と新設を進めている」と説明しているが、裏側には「新設」どころではない「のっぴきならない台所事情」が存在していた。
金正恩総書記の動静や北朝鮮の内政事情に詳しい国際ジャーナリストが明かす。
「最大の理由は『カネがないから』です。加えて北朝鮮は今、『苦難の行軍』と呼ばれた1990年代の食糧危機さながらの窮乏状態にある。要するに、カネもなければ食い物もない。これでは在外公館の維持などできるわけがありません」
北朝鮮の在外公館は外貨稼ぎの闇拠点になっていたが、それが西側諸国の圧力によって困難になったという側面もある。国際ジャーナリストが続ける。
「北朝鮮の外交官は外交特権をフル活用し、違法な密輸や武器輸出などで外貨を稼いでは、本国にいる金正恩への送金を続けてきた。ところが核実験や弾道ミサイル発射などに対する国連安保理の制裁によって、もはや闇の外貨稼ぎを続けることができなくなってしまった。まさに『泣きっ面に蜂』の窮状と言っていいでしょう」
金正恩王朝はもはや「国家のテイ」すら維持できない窮地に追い込まれているのだ。
(石森巌)