「♪六甲颪(おろし)にぃ~颯爽とぉ~ 蒼天翔けるぅ~日輪のぉ~」
阪神ファンなら誰でも知っている「阪神タイガースの歌(六甲颪)」。38年ぶりの日本一に輝いた今年、本拠地・甲子園球場でこの応援歌が何度歌われたことか。
虎党では人後に落ちない筆者も、ビール片手のテレビ観戦で「六甲颪」の大合唱に酔いしれたクチだが、歓喜の熱狂がひと段落してから、ふと疑問が頭をよぎった。
そもそも「六甲おろし」とは、気象学的にどんな風なのか。そこで関西在住の気象予報士に尋ねてみると、
「六甲おろしは、六甲山系から吹き降ろしてくる北風です。特に等圧線が狭く込み入った、西高東低の気圧配置となる冬期は、この季節風が強く吹きます」
ということは、シーズン中の甲子園球場に六甲おろしは吹かない?
「その通りです。六甲おろしは山と海の気温差によって、晩秋の夕方以降にも吹くことがありますが、シーズン中に吹くことはほとんどありません」
となれば、甲子園名物の「浜風」は「六甲おろし」ではないということになる。気象予報士が続ける。
「俗に言われる『浜風』は、夏の日中などに、陸地と海面の気温差が大きくなることによって昼過ぎ以降、海から陸に向かって吹き上げてくる強い南風です。阪神甲子園球場の場合、ホームベースから見て、センターのバックスクリーンはほぼ南の方向。より正確に言えば、わずかに西に寄った南の方向に位置しています」
なるほど、だから「浜風」はセンターからレフト方向に吹くと!
「その通りです。しかも甲子園球場の東側には陸地が広がっており、名物の『浜風』はしばしば南西方向からの風、つまりセンターからレフト方向への風となって吹いてくるのです」
万事納得である。仮に甲子園球場の方位が現状の真逆だったとしたら、過去の熱戦の様相もかなり違ったものになっていたかもしれない。
(石森巌)