公明党の山口那津男代表が、4年ぶりとなる「北京詣で」を敢行した。訪中日程は2日間。その初日にあたる11月22日、山口代表は中国共産党序列5位の蔡奇政治局常務委員(中央書記局書記)と会談し、15日に死去した池田大作創価学会名誉会長が日中国交正常化に果たした役割を振り返った。その上で、両国が自民、公明の両党と中国共産党との政党間交流の再開に向けて取り組むことなどを確認し合った。
山口代表と蔡常務委員との会談は終始、和気あいあいの友好ムードで進行。そんな中、山口代表がやおら切り出したのが「パンダのおねだり」だった。
山口代表は宮城県仙台市がジャイアントパンダの受け入れを希望していることを、蔡常務委員に伝達。郡和子仙台市長から託された親書を手渡しながら、仙台市にパンダを貸与するよう、中国側に熱烈要請したのである。山口代表によれば、蔡常務委員はパンダの貸与に前向きな姿勢を示したのだとか。
本サイトが11月18日に配信した記事でも指摘したように、習近平国家主席は「新パンダ外交」を掲げ、ロシアなどの友好国にはパンダを積極的に貸与する一方、アメリカなどの敵対国には返還を強硬に求めるなど、戦略を先鋭化させている。当然、習近平にとって、アメリカと同盟関係にある日本は「敵対国」に該当する。
そんな状況下での、パンダ貸与のおねだりである。自民党の右派議員の一部からは早速、山口代表に対する非難の声が上がった。自民党中堅議員が、アキレ返った表情で吐き捨てる。
「習近平が極東地域でテメー勝手な覇権行為を強行する中、隣国の日本は中国による軍事的脅威に晒され続けている。公明党や創価学会が日中友好を進めてきたことは事実だが、今は状況が一変していることを、山口代表は自覚すべきでしょう。今回の『パンダを貸してください』とのお願いが、中国側のプロパガンダに利用されるのは明らか。結局、習近平との会談も実現せず、完全に足元を見られた格好ですよ。ハッキリ言って、山口代表の北京詣では『媚中外交』以外の何物でもない」
習近平率いる中国が今、尖閣や沖縄を本気で獲りにきていることは、多くの専門家が口を揃えて指摘している。のん気にパンダをおねだりしている場合ではないのだ。
(石森巌)