優勝するに相応しいチームだった。
J1第33節、ヴィッセル神戸対名古屋グランパスは前日の試合で優勝を争っていた横浜F・マリノスがアルビレックス新潟と引き分けたため、神戸が勝てば優勝という大一番となった。
立ち上がりから主導権を握った神戸は前半、エース・大迫勇也のアシストから井出遥也、武藤嘉紀のゴールで2点リード。その後、ユンカーのゴールで1点差にされるが粘り強いサッカーで逃げ切り、悲願のJ1初優勝を決めた。
9月3日の京都サンガF.C.戦に勝ち首位に返り咲くと、次の広島戦に敗れたものの、そこからの戦いぶりは圧巻だった。
特に今季の神戸を象徴するような試合だったのは、9月29日のアウェー・横浜FM戦だった。優勝を左右する天王山で2-0で勝利したが、そこまでの力の差はなかった。ただ、神戸の選手たちはチャレンジャーのように最後の最後までハードワークを続けた。試合後のインタビューで武藤が、
「僕たちの120%を出さないと勝てない相手だとわかっていました。だから、どんな状態になろうと、最後までチームのために走り続ける気持ちで試合に臨みました」
とコメント。ベテランも外国人も手を抜かず運動量で相手を圧倒する。キャンプからやってきたことを最後まで信じてやり通した。
でも、簡単なシーズンではなかった。開幕からセンターバックにケガ人が続出し、京都から移籍してきた本多勇喜が使えなかったらどうなっていたか。シーズン途中の7月にはチームキャプテンのイニエスタが退団。8月には中盤の要だった齊藤未月が全治1年の大ケガを負う。さらに終盤になって、齊藤と共に中盤を支え、それまで全試合フル出場していた山口蛍がケガで欠場。チームは満身創痍だった。
それでも吉田孝行監督のマネージメントが冴えた。齊藤の穴を埋めた扇原貴宏は、試合を重ねるごとに持ち前の展開力を発揮。山口の抜けた穴はサイドバックの酒井高徳を中盤に上げた。また、終盤に先発で起用された井出がゴールやアシストでチームの勝利に貢献するなど監督の采配がズバリと当たった。
神戸のJ1初優勝で新たな歴史が生まれた。資金力を生かして大型補強を繰り返し、ついに掴んだタイトル。だが、ここで終わりではない。すでにドイツでプレーする原口元気、スコットランドでプレーする小林友希を獲得する噂がある。これからも大型補強を続け、黄金時代を築いてほしい。神戸にはそれだのポテンシャがあるはずだ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。