11月29日、違法薬物問題で揺れていた日大アメリカンフットボール部の廃部が決定した。戦前、1940年に創部された83年に及ぶ歴史に幕を閉じることになる。
日大アメフト部は大学日本一を決める「甲子園ボウル」に21回優勝。「フェニックス」の名称で知られ映画化もされた強豪だったが、2018年の悪質タックル問題に引き続き3人の逮捕者まで出した薬物問題で、厳しい選択を迫られることになった。
「自業自得」の声は確かにその通りなのだが、悪質タックル問題後、実は部は「再生」していた。きっかけを作ったのは日大で、ヘッドコーチ(HC)に外国人指導者7人を含む69人の応募の中から橋詰功氏を招聘。一度もHCのキャリアのない指導者を選んで再スタートを切ったことで話題になった。チームは1年で1部に返り咲き、20年には甲子園ボウルで優勝している。
大学のスポーツ部で不祥事が起きると、当事者たちがボランティアなどの社会貢献を軸にした復帰プロジェクトが組まれるが、橋詰氏は選手との対話を重んじて再建に努め、チームを強くすることで償うことを徹底させてきた。しかしその契約は3年間で、
「21年8月、契約満了で日大を去ることになったんです。日大側から電話で通告されました。ただ、本人は続投を希望していたんです」(アメフト担当記者)
後任にはHCもスタッフも全て「日大OB」を登用。結果的に今回の違法薬物問題が起きた。大学スポーツ界では09年に近畿大ボクシング部の部員が通行人を襲うなど傷害事件に関わったことで一度は廃部になったものの、12年に同部OBでタレントの赤井英和氏が総監督として立候補し復活した例もある。日大アメフト部は再び「不死鳥」のごとく蘇ることができるか。
(小田龍司)