日本大学は薬物事件で3人の逮捕者を出したアメリカンフットボール部を、廃部にすると決めた。11月27日には警視庁薬物銃器対策課が、密売人から大麻とみられる違法薬物を購入したなどとして、麻薬特例法違反の疑いで、新たにアメフト部3年生の部員を逮捕したばかりだった。部員への聞き取りで、寮には違法薬物を使用するための「大麻部屋」の存在も明らかになった。
最初の逮捕者となったアメフト部3年生の北畠成文被告は12月1日の初公判で、仰天の証言をしている。冒頭陳述では、北畠被告が高校生からの大麻常習者だったと指摘。そして「アメフト部の寮の屋上や部屋で、友人らと薬物を使用していた」ことが明かされ、続けて検察官が被告に「アメフト部で何人ぐらいが薬物を使っていたのか」を問われると、北畠被告は次のように答えたのだった。
「(大麻を吸っていたのは)10人程度だったと思う」
寮内の空き部屋に集まり、月1回から週数回の頻度で大麻を使用していたという。検察側は懲役1年6月を求刑した。
戦前の1940年に創設、83年の歴史がある日大アメフト部の廃部に、テレビコメンテーターからネットユーザーまで「真面目に取り組んでいた選手が可哀想」「人生を左右する」「人権侵害」と部員に同情する声もあるのだが…。
ここで疑問がよぎる。何をもって「真面目に取り組んでいた選手」の線引きをするのか。大麻は血液検査なら使用後3日以内、尿検査なら1週間以内に採取しないと大麻成分が検出されない、と言われる。日大がアメフト部合宿所で大麻片を発見したのは7月6日で、警察に連絡したのは18日。警察がこの時点で部員全員に尿の提出を求めても大麻成分が抜けてしまった後で、日大が組織ぐるみで警察の捜査妨害をしたと疑われても仕方がない。逮捕された3人以外の部員の「潔白を証明する機会」は永遠に失われてしまった。
大学側の対応のマズさもあるが、日本大学OGの岩崎恭子は、バルセロナ五輪競泳で金メダルを取った14歳からドーピング検査を受けている。五輪強化選手はたとえ中学生でも、薬と検査についての知識を持っているし、トイレに係員が同行する国際大会の尿検査には、一人で対応しなければならない。
片やアメフト部は大学生にもなって、植物片が発見されてから廃部までの半年間、教職員や監督の指示を待たないと何も動けず。自ら尿検査や毛髪検査を申し出なかったのだろうか。
廃部後、OBの支援で同好会からやり直したとしても「自分で考え、行動することもできない大学生アスリート」がまた育つのであれば、廃部処分に何の意味もない。
大麻使用疑惑がグレーのままで、他大学のアメフト部やクラブチーム、社会人チームはすんなり受け入れてくれるほど甘いのか。一部メディアでは日大OBの薬物使用疑惑も報じられ、悪質タックル事件の処分も他競技では考えられないくらいユルかったことを思い出して、すっかり興が醒めた。せっかく土屋太鳳の姉・土屋炎伽が美しすぎるチアリーダーとして社会人アメフトリーグを盛り上げているのに、Xリーグを一度も観戦しないままシーズンが終わりそうだ。
(那須優子)