乗組員が1人も乗船していない、謎の「幽霊船」をご存じだろうか。それがタイの沖合で発見されたのは、昨年1月6日のことだった。地元紙「Metro」などによれば、この船はタイ南部ソンクラー県沖合で石油掘削作業員たちが発見した、全長約80メートルのタンカー。船の腹には「金水源2」と中国語の船名が書かれていたものの、船内には船の身元を確認できる書類は見当たらない。しかも牽引中に沈んでしまったことから、地元では「突如として海中から現れ、再び海中に沈んでしまった謎の幽霊船だ」として大きな話題になったのである。
この船は南の海に出現、人影もいっさい見られない文字通りの「幽霊船」だが、二百数十年前には「船員全員が『瞬間冷凍』されたまま、大海原を漂う状態で発見された」という幽霊船があった。それが、グリーンランドの海岸沿いで発見された、オクタビウス号である。世界の超常現象に詳しい専門家が解説する。
「オクタビウス号はイギリス船籍の商船で、1761年9月に船長の妻と息子を含めた乗組員28人を乗せ、ロンドンを出発。一路中国へと向かい、1年後には無事に中国に到着しています。ところが翌1762年秋に北アラスカへ到着後、出航したのを最後に、いっさいの消息が途絶えたというんです。そして13年後の1775年、グリーンランド西海岸沖を航行中の捕鯨船ヘラルド号が、沖合に浮かぶ、氷山に覆われたこの船を発見したというわけなんです」
船長の指示により、ヘラルド号の乗組員4人がオクタビウス号に潜入したが、甲板に人影はなかった。そこで船内に入りると、凍り付いた船員らの遺体を発見することになる。超常現象に詳しい専門家が続ける。
「遺体の大半は簡易ベッドに横たわっていたようですが、中には立ったまま凍り付いているものもあったといいます。さらに船長室を開けると、船長が航海日誌を広げたまま息絶えていた。潜入した4人はあまりの恐ろしさに正気を失い、慌ててヘラルド号へと逃げ帰ったそうです」
だが、船員のひとりが船から持ち帰った航海日誌を目にしたヘラルド号の船長は、思わず言葉を失った。というのも、日記の最後に記された船の位置はアラスカ州ウトキアグヴィクの北約400キロの海域で、当時はまだその『北西航路』は未開拓だったというのだ。
「つまり、乗組員全員が凍死した後に潮に流され、13年かけて奇跡的に北西航路を航行したことになる。この船の乗組員がいつ、どんな理由で冷凍状態になったのかは不明ですが、冷凍されたまま10年以上も漂流し、沈むことなく、他の船に気付かれないことなどありうるのか。それが、オクタビウス号が今もって幽霊船と呼ばれる所以なんです」(前出・超常現象に詳しい専門家)
ヘラルド号に発見されて以降、オクタビウス号の目撃報告は全くない。
(ジョン・ドゥ)