基本的に、スキャンダル発覚後に開かれる記者会見というのは、釈明の場である。したがって、たいがいはその多くに「全くの事実無根です」、あるいは「この部分は認めますが、ここは全然違っています」といった、否定の言葉が出てくることが常だ。
ところがテレビカメラ16台、報道陣120人を前にした記者会見で、のっけから「記事に関してはおおむね事実です」「記事が出てすぐにお詫びすべきでした」「隙だらけなんでしょうね」「こんな男ですが、もう一度自分を見つめ直して前に進んでいきたい」と、恐ろしいほどの低姿勢で不倫の事実を認め、平身低頭で再起を誓った男がいる。「世界のケン・ワタナベ」こと渡辺謙だった。2017年7月15日のことである。
当時、渡辺は南果歩と婚姻関係にあったが、2017年4月、ニューヨークのセントラルパークでの、21歳年下の日本人女性との手繋ぎデートをスッパ抜かれ、これが原因で南と別居。沈黙が続く中、3カ月後のこの日、東京・品川で記者会見に臨むことになったのである。
「(女性とは)話し合いをして、関係は解消しました」
と説明する渡辺。だが、南の乳ガン闘病中のスキャンダル発覚に、
「何よりも妻に本当に苦しい、悲しい思いさせてしまった。きちんと謝罪して、コトがコトなので、少し時間をかけながらゆっくりと今、軌道修正しているところでございます」
神妙な面持ちで頭を下げるのだった。
ただ、本人も言うように「コトがコト」である。とりわけ女性にとっては許しがたい裏切りということもあってか、渡辺を最前列で囲む女性記者や女性レポーターたちの質問は、まるで南の心情を代弁しているのかのような、極めて厳しいものに終始した。
――騒動以来、自宅に帰っていないと聞いていますが。
「それはすぐに戻れないですよ。冷静になる時間が必要だったのもあります」
――荷物が自宅から叩き出された、と…。
「いや、叩き出されたとか、ということはなく…普通に宅配便で送っていただきました」
――結婚生活で浮気がバレたのは今回だけ?
「今回だけです…」
――世界のケン・ワタナベも普通の男性だったということですか。
「おっしゃる通りです…。弁解の余地はありません」
まさに「針のムシロ」である。某番組では上沼恵美子からも「やだ~、ラスト・サムライやと思っていたのに、ただのオッサンやったね~」とバッサリ斬られた。
結果、渡辺と南は翌2018年5月に正式離婚。その後、渡辺はくだんの女性と再婚したが、二度と針のムシロに座ることのないよう…。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。