戦後、ここまで世間をナメきっている大学法人があっただろうか。
日本大学は12月21日、違法薬物事件を受けて廃部が決まったアメリカンフットボール部の部員への説明会を、東京都千代田区の大学本部で開き、来年度に向けて新たなアメフト部を設置することを明らかにした。
大学側からは、年内での辞任が決まっている沢田康広副学長らが出席。来年度も従来通りの活動予算がつき、違法薬物事件の舞台となった寮は使用を再開、スポーツ推薦制度なども引き続き適用するという。アメフト部解体は単なるポーズだったのだ。ある個別指導塾の講師がため息をつく。
「日本大学はなぜ大学受験シーズンを控えたこの時期に、付属校生や受験生、その親を逆撫でするような対応をするんですか。アメフト部新設を発表し、スポーツ推薦入学を保証するのは『入学を確約していた高校生アメフト選手への訴訟対策』と疑われても仕方ないでしょう」
日大が強気なのは、危険タックル問題、前理事長逮捕…と不祥事が続いても、2023年の日大受験者数が9万人を超えたからなのか。2018年に起きた危険タックル問題の翌年、日大の受験生は前年の受験生数11万4000人より1万5000人減り、10万人を割り込んだ。「日東駒専」の序列も逆転。日大と東洋大の両方に合格した文系学部志望の受験生については、東洋大に進学する学生数が日大のそれを上回った。
文系では明らかな「日大離れ」「学生のレベル低下」が起きているが、日大と競合する学部が少ない理系学部志望の受験生には、影響が少ないものと思われる。前出の個別指導塾講師によれば、
「日東駒専やその上のMARCHを狙う学力のある学生は日大受験を避ける傾向にありますが、今年はこれまで日大レベルに引っかかりもしなかった偏差値40台、30台の受験生が日大受験を考えています。保護者との面談でも『人気のない日大を受験するのはどうですか』という質問を受けますね。いわゆる偏差値30台、40台で定員に満たない『Fランク大学』に入学して学歴で肩身の狭い思いをするより、今なら日大に入学できるかもしれない、という期待の表れです。夏期講習の時点で日大を志望していた受験生と親御さんからは『あの日大に入れるのは子供が可哀想だから、もうちょっと上のランクを狙えないか』という相談も受けます。受験生数に変動はみられないかもしれませんが、日大生の学力低下、レベル低下は免れないでしょう」
いわゆる「Fランク大学」の中には、分数計算も満足にできない学生を丁寧に指導する、家庭的な大学もある。義務教育相応の学力を持たない受験生が、日大のようなマンモス大学に行くことが正解とは思えないのだが…。
新型コロナで大学生活を謳歌できず、ようやく日常生活が戻ったら、アメフト部の薬物事件。この上、さらに自分が受験した当時より「大学の格」が落ち続けるとしたら…。
日本大学の執行部はアメフト部員ファーストではなく、現役学生ファーストで対応にあたるべきだろう。