12月24日に京都で開かれた高校駅伝、女子の部で劇的な逆転勝利をした神村学園の3年生アンカー、カリバ・カロライン選手(ケニア国籍)の快走は圧巻だった。それでも書く。後味の悪いレースだったと。
タスキを繋いできた仙台育英のアンカーは、カリバ選手に1分20秒差をつけて西京極総合運動公園競技場のトラックに帰ってきたが、パリ五輪ケニア代表候補にもなっているカリバ選手がみるみる追い上げる。ゴールテープ手前の100メートル手前でカリバ選手に追い抜かれ、1秒差の2位でフィニッシュした途端、トラックに突っ伏して号泣した。
仙台育英もケニア国籍の留学生1名が加わったチーム編成で、両校は1秒差の互角の戦い。逆に言うと、ケニア勢のいない他の都道府県代表校に勝機はなかった。その上で日本人女子高生がゴール直前に追い抜かれるという、見ている方も絶望感と無力感に苛まれる展開だった。
駅伝中継を観戦していた、中高生を持つ親や教育関係者は思っただろう。
「これで子供たちはますます努力をしても無駄、とシラけるだろうな」
新型コロナ以降、高校生の3割から4割が無力感、無気力感に襲われていると、複数の教育機関、研究機関が公表している。12月24日のNHK高校駅伝中継は、ますます日本の高校生の心と意欲を削ったことだろう。
高校駅伝の予選出場校は全国で減少しており、わずか12校で予選を行う県もある。少し古くなるが、2016年に日本陸上競技連盟がまとめた資料「高校生における陸上競技の継続および非継続に関係する要因」によると、中学校では陸上部員だった女子高生の約7割にあたる3万人が、高校では陸上部に入らないという。
特に陸上部離れが起きているのが公立校で、夜遅くまでキツい練習をしたところで、環境の整った私学や、心肺機能と身体機能で優れた留学生には勝てない。さらに部員も少ないから、駅伝チームも組めない。10代の頃から「努力をしても無駄」「真面目にやっても損をする」を学ぶために陸上部に入るなど、馬鹿馬鹿しいことこの上ない。中学時代から全国区で知られた才能ある女子高生でもない限り、仲のいい先輩や友達と他の楽しそうな部活に入ろう…と考えるのは当然だろう。
唯一の救いは、男子の部は留学生がいない佐久長聖が大会新記録で優勝したこと。
さらに全国高校駅伝競走大会の実行委員会は、2024年大会から出場枠を58校に増枠し、さらに外国人留学生が走る区間を男女とも最短の3キロ区間のみとルール変更を決めた。これで少しは高校でも陸上部を続けよう、努力してみようという子供が増えればいいのだが。
(那須優子)