記念すべき第100回大会を迎える「箱根駅伝」こと「東京箱根間往復大学駅伝競走」。史上初の2年連続学生駅伝3冠を目指す駒澤大学に、一泡吹かせるライバル校は登場するのか。マラソン界のレジェンド・瀬古利彦氏(67)に下剋上展望を聞いた。
前回の箱根駅伝は大エースの田澤廉(現・トヨタ自動車)を擁し、圧巻の強さで優勝した駒大。今季は「漢(おとこ)だろ!」のゲキでお馴染みの名将・大八木弘明監督(65)が勇退して総監督になり、藤田敦史氏(47)が監督に就任した。
大黒柱だった田澤も卒業したが、新チームは戦力ダウンどころか、10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝で、共に1区からトップの座を1度も譲ることなく完勝。学生駅伝3冠にリーチをかけた。
王者の強さの秘密について、瀬古氏はこう感嘆する。
「駒大は世界で戦える選手を育成するため、『Sチーム』というグループを作り、卒業生の田澤と一緒に鈴木芽吹選手(4年)、篠原倖太朗選手(3年)、佐藤圭汰選手(2年)が大八木総監督のもと、ハイレベルの指導を受けています。そこに入れなかったAチーム以下のグループの選手は、間近で練習を見ながら刺激を受けて、チームの底上げにつながっています」(「」以下、瀬古氏)
このまま実業団の大会に出場しても優勝争いできる最強チームと太鼓判を押すが、中でも注目は、洛南高時代に1500メートル、3000メートル、5000メートルで高校記録を樹立した佐藤選手だ。
「11月に行われた『八王子ロングディスタンス』で初めて10000メートルに出場すると、27分28秒50をマーク。U20日本記録を30秒以上更新し、想像をはるかに超える強さを見せてくれました。箱根では3区で起用すると思いますが、ドンッと勢いよく前に出て、盤石の走りで2位に3分以上の差をつければ、この時点で勝負あり。仮に1区、2区で失敗しても十分に大逆転できる力があります」
その他のエントリー選手もエース級で、絶対王者に隙はなし。そんな「駒澤1強」の対抗馬は、総合優勝最多の14回の記録を持ち、前回2位の中央大だ。
「鍵を握るのは大エースの吉居大和選手(4年)です。とにかく箱根に強く、前回の2区では、駒大の田澤、青山学院大の近藤幸太郎(現・SGホールディングス)とのデッドヒートを制して区間賞を獲得しました。弟の駿恭選手(2年)もスピードがあり、吉居兄弟が1区、2区でドドーンと突き放し、前回3区区間賞の中野翔太選手(4年)も実力を出し切れば面白い。そのためには、1号車の真後ろについて先頭で走り続けなければなりません。車体が大きな1号車を風除けにすれば体の負担が減るし、カメラが目の前にあって、ずっと自分を映してくれるのって気分がいいじゃないですか(笑)。序盤で先行する展開に持ち込めば、駒大に焦りやオーバーペースなどのミスを誘い、勝機が見えてくるかもしれません」
往路の平地区間が勝敗を分けることになりそうだ。