Jリーグ開幕に向け王者・ヴィッセル神戸が積極的な補強をすれば、王者奪還を目指す川崎フロンターレや浦和レッズは多くのメンバーの入れ替えが行われている。
そんな中、5年連続無冠、7年連続国内無冠となった名門・鹿島には大きな動きがない。
昨季は岩政大樹監督のもと、DF植田直通、昌子源、MF佐野海舟、藤井智也、FW知念慶と大型補強を行った。それでもリーグ5位、ルヴァンカップベスト8敗退、天皇杯3回戦敗退と散々な結果となった。
ここ数年の鹿島を見ていると、監督が固定されておらず、代わるたびに違うサッカーになっている。
大岩剛監督の後を継いだザーゴ(2020~2021年4月)は、それまでの堅守速攻を主体とする鹿島のサッカーに、主導権を握る攻撃力を根付かせようとした。ブラジル人ではあるが欧州のサッカーをミックスさせ、それまでの鹿島のサッカーを変えようとした。しかし2年目、失点が多くスタートにつまずくと解任され、相馬直樹コーチが監督に昇格した。
相馬監督は最終ラインを安定させ、堅守速攻のサッカーに戻り、ザーゴの攻撃的なサッカーとは正反対だった。シーズン終了後に相馬監督は退任となった。
2022年には、クラブ史上初のヨーロッパ人監督、レネ・ヴァイラーを就任させ、今度はボールを奪ったら前線にという縦に速いサッカーに変わった。一時は首位に立ったものの、上田綺世が欧州に移籍すると失速。8月には岩政コーチが監督に昇格。
ここ4年間で監督は4人入れ替わり、それぞれが違うスタイルのサッカーをやっている。継続性、繋がりがなくチームの方向性が定まっていない。例えば優勝した神戸は、昨季の夏以降に試合内容が良くないため選手だけでミーティングをしている。内容は自分たちのサッカーができているかどうか。神戸のサッカーの基本である、チームのために走る、チームのために戦う。それを再確認して終盤の快進撃に繋げた。
残念ながら、今の鹿島には自分たちの原点というか、チームの土台となるものがないのではないか。
鹿島は今季からJクラブでの監督経験があるランコ・ポポヴィッチが監督に就任した。吉岡宗重フットボールダイレクターとしては、岩政監督続投が既定路線だったはず。今年を岩政体制勝負の年にしたかったのだろう。しかし岩政監督が自ら退任したことで監督が白紙に戻った。他クラブに比べて監督の人選が遅れ、吉岡FDが大分の強化部時代にポポヴィッチを招聘した経験があり、その関係での監督就任となったのだろう。町田ゼルビア、FC東京、セレッソ大阪などいろいろなクラブでの経験はあるが、実績という部分ではどうだろうか。
ここ数年のバタバタ感は名門らしくない。それでも今季は柴崎岳がキャンプからチームに合流できる。ピッチ上の監督になれる選手なだけに、今の鹿島をどう変えるか。
外国人もディエゴ・ピトゥカ、アルトゥール・カイキなどがチームを去り、クロアチア人DFヨシプ・チャルシッチを獲得した。外国人枠はまだ余っているだけに、今後の補強にも期待したい。
優勝を狙うというよりも、まず鹿島のスタイル、方向性をハッキリさせることが大事ではないだろうか。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。