1月27日と28日に予定されている将棋の「王将戦」第三局。対戦の地となる島根県大田市は、すでに盛り上がっている。とりわけ話題になっているのは、藤井八冠と菅井竜也八段と同じ「国民宿舎さんべ荘」に泊まれる特別宿泊プランだ。
1月26日の前夜祭に参加し、翌27日の対局初手を見学できる「初手見学プラン」と、28日の封じ手開封と感想戦を見学できる「封じ手開封・感想戦見学プラン」で、それぞれ1組限定。値段は80万円で、5組の申し込みがあったという。
この特別宿泊プラン、地元メディアでは「なんと80万円もする」という温度感で取り上げられているのだが、はたしてこの価格設定は高いのか、はたまた安いのか。
昨年末に開催された、新将棋会館建設クラウドファンディング企画「藤井聡太八冠と永瀬拓矢九段 特別対局」観戦権も、寄付金80万円の価格設定だった。日本将棋連盟の羽生善治会長が「100万円を超えないお上品な価格設定」「多くの人が参加できる設定」にしているのかは定かでないが、筆者はいずれの観戦料も、むしろ安いと考える。
通常であれば日帰り温泉650円で利用できる庶民的な国民宿舎に、2人で泊まっても、1人あたり40万円かかる。
だが、星空を眺めながら露天風呂に入るロケーションはなかなか魅力的で、地元のしまね和牛と奥出雲ポークを使った懐石料理も美味しそうである。なにしろ天気に恵まれれば、対局前の藤井八冠、菅井八冠と同じ場所から奥出雲の雲海を拝むことができる。藤井八冠が何日間タイトルを防衛し続けるかはわからないが、限りある在位期間に藤井八冠と過ごせるプランなのだから、熱狂的将棋ファンにしてみれば、1人あたり1泊「88万円」でもいいくらいだ。
そもそも観光立国を目指しているのに、日本は宿泊料金が安すぎる。
いよいよ春節が始まる。福島第一原発の処理水に荒唐無稽なイチャモンをつけ、日本の海産物の輸入を拒んでいるクセに日本に押し寄せる中国人観光客に「春節料金1泊40万円」「ホタテ1個1万円」を請求して、被災地復興に充ててもバチは当たらないだろう。
(那須優子)