「毎月分配型投資信託」に買ってもいい商品は1つもない もし買ってしまったなら即刻解約だ!
投資信託で売れ筋の商品の1つに「毎月分配型」がある。毎月1回、分配金が支払われる商品で、主に高齢者が買っている。「毎月お金が入るのでわかりやすい」と評判で、「年金の不足分を補う『自分年金』を作りましょう」といったセールス・トークが功を奏しているようだ。
しかし、読者は、この商品に引っ掛かってはいけない。毎月分配型の投信で買ってもいいと思える商品は「1つも」ないし、現在その種の商品を保有している方は、即刻解約することをお勧めする。
毎月分配型投信の中身を、もう少し説明してみよう。投資信託の一種なのだが、運用資産を、外国の債券(特にリスクの大きな「ハイイールド債」が多い)や、海外REIT(不動産投資信託)、外国株などに投資し、加えて、為替リスクをブラジル・レアルやオーストラリア・ドル、南ア・ランドなどに切り替えたものが多い。話を聞いただけで頭が混乱しそうな複雑さだが、実際に複雑であり、商品を売る金融機関のセールスマンでも仕組みを隅々まで正確に説明できる者は少ない。
こうした複雑な仕組みを使うのは、毎月支払う分配金を大きくするためだ。しかし、大きな分配金を払うと、その分だけ元本が減るので、投資家が得をしている訳ではない。得でないばかりか、毎月の分配金支払いは、毎年1回の分配金支払いと比較して、課税のタイミングが早まるため、運用利回りがプラスなら計算上「必ず損!」なのだ。
加えて、毎月分配型投信は手数料が高いものが多い。販売手数料で3%、信託報酬が(毎年)1%台後半といった商品が大半だ。この水準ははっきり言って高過ぎる。毎月分配型投信への投資は、商品を売る銀行や証券会社と運用会社を儲けさせるために、リスクを取っているようなものだ。
金融機関が毎月分配型投信を顧客に販売する場合、法律上のリスクがあるから元本保証でないことを告げるものの、過去の分配金の支払い実績が安定していると強調することが多い(しかし元本は不安定なのだが)。セールスマンのこうした話を聞いて、毎月分配型投信を買うのはまったく愚かだ。
実際には、よほどの円安か外国資産高にならないとプラス利回りにならない商品が多いが、そのような状況になる時には、別のもっと手数料の安い商品に投資していると「もっと儲かる」はずだし、損をする場合も、手数料の安い商品のほうが損は小さい。結局、毎月分配型投信は「常に」投資しないほうがいい商品であり、買ってしまったのであれば、ハッキリ言って、あなたは悪いセールスに騙されたのだ。その場合、どうするか。答えは、即刻解約だ。悪い商品を売りつけた取引金融機関も変えるほうがいい。買値より高いか安いかとは無関係に「悪い状態」をすぐに売却すべきだ。
◆プロフィール 山崎元(やまざき・はじめ) 経済評論家。58年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社し、野村投信、住友信託、メリルリンチ証券など12回の転職を経て、現在は楽天証券経済研究所客員研究員。獨協大学経済学部特任教授。「全面改訂 超簡単 お金の運用術」(朝日新書)など著書多数。