日本将棋連盟が発表した2023年の獲得賞金・対局料ランキングでは、史上初の八冠独占を達成した藤井聡太が1億8634万円でトップ。1995年に羽生善治九段が記録した1億6597万円を超える、史上最高額を更新した。藤井八冠は昨年、これまた史上初となる一般棋戦(日本シリーズ、銀河戦、朝日杯、NHK杯)を全優勝し、前人未到の完全Vを達成するオマケ付き。前年比6429万円アップとなった。
そんな藤井八冠の金銭感覚を、プロ棋士になってからの発言をもとに紐解いてみた。
【最も高い買い物はパソコン】
藤井八冠の得体のしれない強さの秘密は「人工知能(AI)」ソフトを駆使した100手以上先を読む解析力と、意表を突く攻めにも59秒以内に冷静に最善手を指す判断力だ。
既製品のパソコンの動作スピードでは藤井八冠に太刀打ちできず、藤井八冠はAIの「読み」のスピードを高めるために世界最高水準の米AMD社の高性能CPU(パソコンの性能を決定づける中央処理装置)を組み込んだPCを自作してきた。米AMD社はインテルと並んでCPU市場の双璧をなす、巨大半導体企業だ。
藤井八冠は同社のパーツを使っていることがきっかけでAMD Japanの広告に出演しており、2022年12月には同社が「AMD Ryzen Threadripper PRO」を搭載したPCを提供したと、公式Xで発表した。
藤井八冠が愛用するCPU「Ryzen Threadripper PRO 5995WX」は、CPU単体でも市場販売価格が100万円を超える。その解析スピードたるや「1秒間で8000手先」まで読める、世界最高水準。同社が開発するCPU最新モデルが完成次第、藤井八冠に技術提供すると確約している。
藤井八冠は「いちばん高い買い物はパソコン」と公言しており、自分で買ったCPUの市場価格70万円を上回る高額商品は買わない方針のようなのだが…。
【100万円の和装は師匠からのプレゼント】
タイトル防衛を重ねるにつれ風格が増してきた藤井八冠の和装姿だが、師匠の杉本昌隆八段は2019年5月と2020年8月に、着物をプレゼントしている。
2019年に贈った濃紺の着物と黒い羽織、灰色でしま模様の仙台平(せんだいひら)で作られた袴は京都の呉服店でしつらえたもので、総額100万円超。ちなみに仙台平の袴は2018年にフィギュアスケートの羽生結弦が国民栄誉賞を受賞した際の授与式でも着用している。
2020年に師匠から贈られた大島紬の薄緑色の羽織は、プロ棋士御用達の白瀧呉服店(東京都練馬区)で購入したもの。価格は数十万円で、藤井八冠といえばこの薄緑色の羽織か紺のぼかしの羽織を想起する人が多いのではないか。
過去の竜王戦で注目された私物の風呂敷は「katakataむすび」ブランドの「くまとさけ」柄。1メートル四方のポリエステル製で、1枚3300円だ。藤井八冠がおやつに食べたことで大ブレイクしたスイーツ「コロコロくまさん」「くま最中」にも通じる、クマが鮭を抱える可愛い柄だ。もしや藤井八冠はクマ好きなのか。
【私服は大谷翔平と同じ趣味かといえば…】
昨年の王将戦での写真撮影で目を引いたのが、胸元にブランドロゴが入った「BOSS」の黒いパーカーだった。BOSSはドジャース・大谷翔平がアンバサダーを務めており、藤井八冠が着たパーカーとソックリの黒いパーカーを、大谷も昨年3月、WBC優勝後にロスに戻った際に着こなしていた。
無敵の2人は服の趣味も似ているのかと思いきや、藤井八冠が着ていたパーカーは伊勢丹立川店からの衣装提供で、自前ではなかったという。
普段はブランドロゴの入った私服を着るわけでもなく、過去のYouTubeインタビューでは、
「自販機で飲み物を買った時に、贅沢しちゃったなと思う」
と財布の紐を締めていた藤井八冠。それでも、手元に100万円があったら「またパソコンを自作する」そうだ。
(那須優子)