プロ野球の“目玉補強”は、今オフもメジャーからの出戻り組だった。日本球界が彼らの受け皿になるのは致し方ない面もあるが、追われるように帰国する選手たちに、常識を超えたレベルの大型契約が待っているのはいかがなものか。はたして、松坂や中島はウハウハ待遇に見合う活躍を見せられるのか──。
12月5日、WBCで2度のMVPに輝いた、侍ジャパンのエース・松坂大輔(34)がソフトバンク入団会見を行った。
9年ぶりの日本球界復帰を果たした、松坂に対する期待は「3年総額12億円」(推定、以下同)という年俸の評価でわかろうというもの。もちろん、このベラボウな大型契約によってソフトバンクは、DeNAをはじめとする興味を示していた他球団を蹴散らし、マネーゲームに勝利したのだ。
松坂といえば、高卒新人時代から3年連続最多勝を記録した規格外のエースだが、これが現時点での正当な評価とはとても思えない。
というのも、松坂はレッドソックス入りした07年から15勝、18勝と2年連続で大きくチームに貢献したが、それ以降は、13年シーズン途中からのメッツ時代も含め、6年連続して勝ち星は1ケタと、大失速中なのである。
もちろん、11年に右肘にメスを入れたトミー・ジョン手術の影響はあるかもしれないが、メジャーを取材する現地ジャーナリストはこう話す。
「トミー・ジョン手術を受けると、復帰直後、すぐには本調子に戻らないのは確かです。その一方で、手術が成功したのであれば、せいぜい2年~2年半で経験者たちは結果を出しています。松坂の場合は手術からすでに3年半が経過している。現在の松坂は、サイドスローに近いうえ、手投げになっています。スピードももう150キロは出ないでしょう」
西武時代に4度も最多奪三振のタイトルを取った「平成の怪物」は、すでに打者を圧倒するかつての豪球イメージとは違うのだ。
「肘を壊しただけではなく、股関節も万全ではないため、立ち投げのようになっているんです。横浜高校時代の恩師・小倉清一郎元コーチからも『西武時代の下半身中心のピッチングに戻せ』と言われましたが、その返答が『言ってる理屈はわかりますが、無理です』だったといいます。自分の体が昔とは違うと、本人がいちばん理解しているのでしょう」
かつては、たとえ150球投げても相手を圧倒して完投してしまう若さとスタミナがあった。しかし球数制限のあるメジャーで8年間プレーし、満身創痍の体となった今、どこまで実力を披露することができるのだろうか。
メジャー中継の解説を務める、野球評論家の橋本清氏も言う。
「確かに手投げになってますね。かつての松坂と比較されるでしょうが、もう日本にいた時の松坂ではない。実際に対戦した、かつてを知らないバッターたちが、どう感じるか。大したことないと思われれば、よりシビアになっていくでしょう。また、今年、日本球界に復帰したDeNAの高橋尚成(39)などを見ていて思いましたが、1巡目はいいピッチングをしても2巡目には捕まってしまう。メジャー凱旋組はスタミナ面に不安が出るケースが多いのです。リニューアルした松坂に期待はしたいですが、日本の野球にリズムを合わせられるかもポイントで、10勝できたらチームに貢献できたと言えるのではないでしょうか」