橋本清氏が中島についてこう話す。
「タイミングの取り方など、アメリカを軸としたプレースタイルから日本のピッチャーに慣れるまで、若干の時間はかかると思う。ただし長期契約なのだから、例えば1年は目をつぶれば、結果を出すようになるという考え方はできます。時間をかければ中島が結果を出すことに不安はないでしょう。ただし、日本球界での過去の実績を加味した年俸ではあるのでしょうが、契約をもう少しシビアにしてもよかったのではないか」
西武を出た時の中島の年俸は2億8000万円だった。それが、渡米しただけで、何もしなくてもこんなに評価が高騰するものなのか。一度、日本球界を捨て、メジャーで実績を残せなかった選手を簡単に優遇する補強戦略には賛否両論が渦巻いている。
「マネーゲームになってしまったが、そういうやり方を取ったわけだ。イチローは田中将大の大型契約が決まった際、『覚悟と自信に敬意が払われるべき』と語ったが、中島はよほどの覚悟があるんだろうな」(球界関係者)
中島の日本球界復帰がマネーゲームになった背景には、松坂が外したボラス氏を代理人にしていたという側面もあるという。
「正直、現在の評価で中島をメジャーに売り込んでも、二束三文にしかならなかった。ところが、日本に話を持っていったら3年12億に化けたんです。かつて“吸血鬼”とも称されたボラス氏にとって、中島は特別なマイナー選手だった。そのボラス氏は現在、阪神・鳥谷敬(33)の代理人も務めています。中島と違い、守備力も買われている鳥谷ですが、過去の経緯から日本人内野手の評価は下がる一方であるため、阪神が巨額な交渉に乗ってきたら、ボラス氏の手腕で阪神残留もあると言われるほどです」(スポーツライター)
ところで、オリックスが中島の契約を発表した直後、主砲・T-岡田が契約を保留した。今季のチーム躍進に貢献した生え抜き選手にとって、出戻り選手ばかりが儲かる構造に不満を爆発させたのかもしれない。大型補強はチームに不協和音をもたらす可能性までも秘めているのだ。
「金子の引退や大引のFAで内野が手薄になる日本ハムも、2年前にチームを去り、レンジャーズ傘下を自由契約になっている田中賢介(33)の呼び戻しが近いうちに合意に至る。複数年の大型契約だといいます。早い段階から動いていましたが、小谷野がFA宣言してオリックスに移籍した一因になったとも言われるのです。選手を数値で評価し、自前の選手を育ててきた球団でしたが、方針にブレが生じてきたのでしょうか」(スポーツ紙デスク)
NPB関係者がこう話す。
「大型契約をしたメジャー撤退組がもし活躍したら、それはそれで諸刃の剣ですよ。メジャーに対する日本球界の格下イメージを植え付ける結果となるでしょうね。失敗しても復帰できるのであれば、選手のメジャー流出もますます止まらないでしょう。長い目で見て、いいことはないですね」
それでも、来季は松坂や中島が話題の中心となってしまうのだろうか‥‥。