鉄道路線には正式名称のほかに、愛称がついていることが多い。山形県を走るJR左沢線(あてらざわせん)は「フルーツライン」、茨城のJR水郡線は「奥久慈清流ライン」と、乗りたくなるような素敵な名前がついている。
だが、鉄道会社がつけたこれらの正式な愛称と違い、自然発生的に誕生し、鉄道好きが使う愛称には、とても人前では口にできないものもある。
そのひとつが「東武アーバンパークライン」。もともとは「東武野田線」だったが、2014年にこの愛称がつくと、今ではアーバンパークラインが正式名称のような扱いになり、車両には「TOBU URBAN PARK LINE」と表記されている(写真)。
そんなアーバンパークラインを鉄道ファンは「アーパー線」と呼ぶ。「アーバン」と「パークライン」の頭を取って作られた略語だが、「アーパー」には「間抜け」という意味がある。すでに死語だが、50歳以上の人にはおなじみの言葉だ。
JR横須賀線の愛称は「スカ線」。「ヨコスカ」の「スカ」なのだが、スカには「ハズレ」という意味があり、いい愛称とは言えない。
最も問題なのは、千葉のJR久留里線(くるりせん)の愛称だろう。木更津駅と上総亀山駅を結ぶ、路線距離32.2キロの短いローカル線。地元では「パー線」と呼ばれている。久留里線がなぜ「パー」なのか諸説あるが、鉄道ライターによると、
「地元では『くるりからくるくる…で、パー線になった』と言われています。また久留里線のマナーの悪い利用客を『くるくる…だ』と批判したことから呼ぶようになった、という説もあるそうです。『パー』はあまり口に出していうのような言葉ではありませんが、木更津周辺ではよく使われていいます。高校生たちは3時台に1本ある下り列車を『3時パー』、4時台であれば『4時パー』と呼んでいます」
今の愛称が全てダメというわけではないが、もっと素敵な名前になってほしい。
(海野久泰)