大谷翔平の通訳だった水原一平容疑者の違法賭博スキャンダルでは、二百数十億円ともいわれる巨額マネーが動いた。水原容疑者はギャンブル依存症で、1日に何十回も見境なく賭け続けたとか。すごい話だ。せいぜい数万円の旅打ち風情がギャンブラーというのもおこがましく、お恥ずかしい限りだが、これだけは言える。旅打ちはギャンブル依存症とは無縁である。
ひと言で表すなら、ギャンブル依存症やアルコール依存症のように、旅打ちは依存することができない。水原容疑者のギャンブルやアルコールならいつどこでも、いながらにしてOKだが、旅打ちは面倒臭さがハンパじゃない。交通手段から宿泊、飲食まで必ずセットになっている。一度出かけるとヘトヘトになって、次に出かけるのが億劫になる。やめようと思えば、いつでもやめることができる。むしろその方が楽だ。
のべつまくなしに賭けるとか、酒を飲むのは、言わせてもらえば怠けているからだろう。旅打ちは怠けていたら、どこにも辿り着けずに終了のゴングが鳴る。ギャンブル依存症になりたくなければ、旅打ちをお勧めする。そもそも毎日スマホでピコピコやって、何が面白いのだろうか。3日で飽きる。
4月14日、中山競馬場ではGI・皐月賞が行われた。旅打ち派は大観衆が集まるような大きなイベントは苦手なので、特別な理由がない限り、出かけない。どこの誰ともわからない人と大騒ぎしても、楽しくないのだ。
というわけで、出かけたのは福島競馬場。平場の開催で馬券を買いながら、お祭りに参加するくらいの気分で、福島で皐月賞の馬券を買うのがちょうどいい。
初めて福島競馬場に行く目的のひとつは、喜多方ラーメンを食べることにある。競馬場の1階に「赤井」という店がある。そこで喜多方ラーメンを食らう。
カーシェアで車を借りて向かったら、JRAの駐車場はいっぱいで、民間の駐車場代が2000円、競馬場のB指定席1100円、計3100円の必要経費。ちょっと高すぎる。
入場して真っ先に向かったのは、もちろん「赤井」。1階のフードスペースには、奥に長く7店舗が軒を連ねる。カウンターで好きな食べ物を買って、フロアの立ち席のテーブルで食べる。ギャンブル場では早食いになるので、シンプルでいい。
「赤井」はいちばん手前にあり、人気店らしく行列ができていた。チャーシュー麺850円(写真)。しっかり湯切りされ、あっさり味のスープも麺もアツアツである。うまい。
フードスペースの入り口右横では、山形・米沢の駅弁として有名な「牛肉どまん中」が売られていた。帰りに買って、新幹線の中で食べようかな。
ホームスタンドの裏側はパドックになっていて、各階から馬を見ることができる。馬を見て馬券を決めることはないけど、間近に見ることができるのは、なんとなくホッとする瞬間。
予約した4階のB指定席は、ターフビジョンのほぼ正面にあった。ターフビジョンの向こうには阿武隈川が流れ、小鳥の森などの山が連なる。海側に行くと、震災の被害が大きかった飯館村や相馬、南相馬などの浜通りになる。
スタンドから見る風景は、4月初めに出かけた阪神競馬場に近いかもしれない。右回り、芝の直線は高低差がある292メートルで、4コーナーの曲線がキツく見える。姫路競馬場に似ている印象だ。
1Rから3R、6Rは3歳未勝利戦、4Rと5Rは障害未勝利戦、7Rと8Rは4歳1勝クラス。ダート、芝が交互、距離も1150メートル、1700メートル、2000メートル、障害の2750メートルと、バリエーションに富んでいる。
福島競馬が荒れるといわれるのは、未勝利戦などのレースが組まれ、距離がマチマチなのもその理由だろう。前日の4月13日は1Rの3連単が55万円、4R111万円、6R36万円、7R29万円、8R67万円、11R32万円と、大嵐のような1日だった。福島競馬、ただ者ではない。
しかし、14日は1Rの3連単88万馬券以降、4ケタ配当が多い落ち着いた流れになっていた。
7Rと8Rは前半のレースをチェックしつつ、珍しく見(ケン)。福島競馬はうかつに手出しできない。馬券は9Rからいこう。
(峯田淳/コラムニスト)