上信電鉄の踏切で、9歳の女の子が列車にはねられて死亡した事故を受けて、群馬県高崎市は警報機や遮断機のない「第4種踏切」を廃止すると決定した。第4種踏切は高崎市内に21カ所あり、住民の合意が得られれば廃止し、得られなければ警報機と遮断機を設置した「第1種踏切」に変更する方針だ。
上信電鉄が走る富岡市も市内に20カ所ある第4種踏切を、住民の合意が得られ次第、廃止。それまでの間はカーブミラーを設置して対応することとなった。
これで悲しい事故は防げるはずだが、廃止はそう簡単ではないと、鉄道ライターが指摘する。
「上信電鉄の第4種踏切は田んぼのあぜ道や、細い道路に置かれていることが多いのですが、散歩や農作業をする人、通学の生徒など、利用者はそれなりにいます。もし廃止となれば、彼らは他の踏切を渡るために、大きく迂回することになる。簡単には廃止に合意できないでしょう。高崎市は国の補助金を活用して第1種踏切に切り替えるとしていますが、富岡市はそれを考えていないようですので、富岡市内の踏切は廃止の難航が予想されます。期限を決めていないのも、コトがそう簡単ではないと認識しているからでしょう」
予算の問題はあるにせよ、第4種踏切の廃止ではなく、第1種踏切に変更するのがベストだと、この鉄道ライターは力説する。というのも、廃止によって「最悪のシナリオ」が浮上するからだ。
「その場合、別の踏切まで行かないといけませんが、面倒だからと線路を渡る人が出てくることが考えられる。廃止された踏切を、こっそり渡ってしまうケースもあるでしょう。そこへ列車が通過したら…。少しでも利用者がいるのであれば、廃止ではなく第1種に変更した方がいい」
第4種踏切は、高崎市と富岡市だけの問題ではない。国土交通省が2021年3月に行った調査によると、日本にある第4種踏切の数は2527。これをどうするのか、鉄道会社と自治体は対応を迫られることになりそうだ。
(海野久泰)