給食といえば、学校生活最大のお楽しみだった。ところが今、全国各地で「慢性的に給食を作る人が不足している」という。どういうことなのか。以下は都内の学校法人経営者に聞いた話だ。
「今まで勤務していた管理栄養士や調理師が、配偶者の転勤などで退職すると、その補充が大変なんです。特に足りないのが、学校や保育園で働く管理栄養士。職員募集に応募があっても、実技をさせてみると、野菜すらまともに切り揃えられない。子供が誤嚥窒息しないようキノコ類や大根、ニンジンなどを1センチ大に切るよう指示を出しても、角切り、みじん切りができない。切った野菜のサイズがバラバラで、それでは子供が誤嚥窒息してしまうので、もちろん不採用です」
こうした人材は老人施設や障害者施設に流れつき、そこで飲み込む力の弱い高齢者や障害者にプチトマトや白玉だんご、トッポギなど、健康な大人でさえ喉につかえそうな食材を提供している。
今年2月には福岡県内の小学校で、乳歯の生え変わり期の小学1年男児がウズラの卵を喉に詰まらせ、窒息死する悲劇が起きた。前出の学校法人経営者が言うには、
「都内でも人材確保に苦労しているくらいですから、地方ならどんなにレベルが低い栄養士、調理師でも学校給食が作れなくなるよりはマシと、採用せざるをえないんでしょう」
野菜もまともに切れない仰天の栄養士が爆誕しているのには理由がある。国家資格である管理栄養士の受験資格は「食や栄養を学ぶ学科」を卒業した者に限られており、これらの学部は女子大学に集中しているのだ。
女子大の凋落が叫ばれて久しいが、2024年度の最新大学受験事情によれば、今年7月から新5000円札の肖像になる津田梅子が創設した津田塾大学ですら、一部学部では模試偏差値45で合格ラインを突破。お茶の水女子大でも、一部学部は模試偏差値55で合格判定が出るほど、女子大生のレベルが落ちている。名門女子大ですらこの惨状で、栄養学科のレベルは推して知るべし、だ。
男子学生がどんなに優秀で調理技術があっても管理栄養士への門戸は狭く、それにひきかえ、女子学生は女子大に入れるという「性差」だけで管理栄養士になれる。女子大にとっては「今どき、女子大を選んでくれた大事なお客様」なので、大学の実技試験なんてあってないようなものだろう。
だから教育委員会や学校法人経営者は、採用時に、
「今ここで、野菜を2センチの長さの短冊切りにして下さい」
と実技試験を課さざるをえない異常事態に陥っている。市中のレストランには男性料理人が圧倒的に多いのに、学校給食だけが女性優遇なのもおかしい。究極の「男女差別」で、子供たちの給食が大ピンチに見舞われている。
(那須優子)