騎手会長・武豊(45)の言葉を借りれば、「2015年は新しい時代の幕開け」だという。日本でもおなじみのM・デムーロ(35)=JRA通算354勝=とC・ルメール(35)=同245勝=の、JRA通年騎手免許の取得が濃厚なのだ。これまで外国人騎手に与えられるのは年間最大3カ月の騎乗に限られる「短期免許」だったが、本免許取得となれば日本人騎手と同等の扱いで、年間を通して騎乗可能になる。デムーロ、ルメールは昨年10月の1次筆記試験に合格し、今年2月の2次試験(面接)に臨む。スポーツ紙デスクが話す。
「一昨年こそ1次試験不合格だったデムーロは、ほぼリベンジを果たしそうです。初挑戦のルメールは半々という状況ですが」
特にデムーロは母国イタリアから家族を伴っての来日予定だというから、気合い十分。海外競馬事情に詳しい競馬ライターの秋山響氏が解説する。
「近年のイタリア競馬界は、馬券売り上げの急速な低下や統括団体の長年の放漫経営がたたって、財政が悪化。賞金未払い問題が発生し、一時は競馬一流国の証しである『パート1国』から外される可能性もあったほどで、優秀な人材の流出は当然と言えます」
昨年のデムーロは独オークスを勝ち、日本でも高松宮記念(GI)を制覇。その実力に疑いの余地はない。
「世界中で結果を残すことは対応能力の高い証拠で、トップ騎手の中でも一握りの者にしかできない芸当です」(秋山氏)
ルメールもまた、世界を渡り歩くトップ騎手だ。
「昨年こそ海外で重賞を勝てませんでしたが、これはアガ・カーン殿下(凱旋門賞馬ザルカヴァなどで知られる馬主)との契約が13年で切れたこともあり、騎乗馬に恵まれなかったという印象です。それでも昨年の凱旋門賞では仏牝馬2冠馬アヴニールセルタンの手綱が回ってくるなど海外関係者の信頼は厚く、衰えなどまったく見られませんよ」(秋山氏)
もし2人がそろって合格となれば国内のリーディング争いが激化し、騎手間の収入格差が一気に広がることに。スポーツ紙デスクは、
「デムーロとルメールは有力馬を持つ社台グループからの信頼が厚いだけに、2人で300勝はいくのでは。その分、日本人騎手の勝ち鞍は減ります。もし、勝率が2割なら1500回の騎乗になる。当然、若手の浜中や三浦、中堅の川田や田辺らは、ローカル騎乗で勝ち星を重ねてトップ10を目指すことになりかねない。最も割りを食うのはトップ50以下のクラスで、勝利数だけでなく騎乗数も激減しそうです」
まさに騎手会にとっては黒船襲来だが、世界進出を目指す社台グループとしては、願ってもない話だという。スポーツ紙デスクが続ける。
「海外の一流騎手は専属契約があって、日本陣営は遠征先での騎手探しに頭を痛めていただけに心強い」
今年の凱旋門賞では、日本馬とのコンビもありそうだ。すでにキズナとラブイズブーシェの陣営が参戦を表明。秋山氏が見どころを解説する。
「93回の歴史で、連覇は6頭。ただ、3連覇はなく、トレヴがその偉業に挑む。阻む候補としては、現地からハープスターとエピファネイアの名前が聞こえてきます。ブックメーカーの前売りを見ても、トレヴに続き、2、3番人気です」
ハープスターは昨年の凱旋門賞で33秒台の豪脚を繰り出し、世界をアッと言わせた。エピファネイアは、ジャパンカップで圧勝。名手スミヨンが「今まで乗った日本馬でいちばん強い」と絶賛したものだった。
「凱旋門賞は賞金が上がったため、今や多頭数は当たり前。後方からでは馬群をさばくのが難しく、勝つのは厳しい。先行馬群で我慢できる精神力の強さが必要でしょう」(秋山氏)
ならば、JCで先行策から後続を4馬身も突き放したエピファネイアか。