2026年北中米W杯アジア2次予選のミャンマー戦(6月6日・ヤンゴン)とシリア戦(6月11日・広島)に挑む日本代表26名が発表された。
日本はここまで4戦全勝で、すでに最終予選進出を決めているだけに、この2試合は完全に消化試合。そのため、今回のメンバー招集に関して、シーズンオフに入る欧州組の主力選手を休ませて、国内外で結果を出している選手にチャンスを与える場にするのではないかと言われていた。
ところが森保一監督は海外組を含め、ほぼベストメンバーを招集した。9月から始まるアジア最終予選前、最後の招集となるため、チームコンセプトを再確認するためなのかもしれない。そう考えると、森保監督らしい人選と言えるのではないか。
森保監督の選考方法もわかりやすい。例えば、昨年11月以来の代表復帰となった、鎌田大地だ。イタリア・セリエAのラツィオに移籍したが、出場機会に恵まれず、今年は代表に招集されていなかった。
ところがラツィオの監督が代わると、8試合連続で先発出場を果たすなど、完全にチームの主力となった。試合に出場できなければ、コンディションや精神的な部分で落ち込むもの。そうした状態で代表に呼んでも、本来のプレーはできない。いくら代表の主力選手だったとはいえ、結果を出していない選手は招集できない。
森保監督も「(代表は)常に競争」と言った。代表の常連、代表の主力という言い方があるが、森保監督にしてみれば、代表のポジションを約束された選手はいないということなのだろう。
そんな今回の代表メンバーの中で最も注目したいのは、デンマークでプレーするパリ五輪世代の鈴木唯人(ブレンビー)だ。2022年1月以来、2年半ぶりの代表招集となる。2年半前はウズベキスタンとの親善試合が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で中止に。つまり、今回が初招集みたいなものだ。
ただ、ここまで順風満帆に来たわけではない。2020年に清水エスパルに入団し、1年目からJリーグで30試合に出場。2年目も主力選手として活躍したが、3年目の2022年はU-21日本代表の活動があり、ケガにも悩まされ、思うような結果を出せなかった。
2023年1月にフランスリーグのストラスブールにレンタル移籍するものの、ほとんど試合に出場できず、7月に清水に復帰。数試合に出場し、8月に現在のブレンビーに完全移籍している。それでもシーズンの前半は途中出場が多く、ポジションを奪えない日々を過ごし、いいニュースを日本に届けることはなかった。
ところがシーズン終盤にきて、爆発する。3月にハットトリックを決めると、4月には5試合で3ゴール、4アシストを決め、月間MVPを獲得。完全にチームの中心となった。
175センチと決して大きくはないが、スピードに乗ったドリブルが得意で、強引に相手ディフェンスを突破する能力がある。ポジションも4-2-3-1システムならトップ下、4-3-3ならインサイドセンター、3-4-3ならシャドーと複数のポジションをこなし、2列目からの飛び出しを得意としている。U-22日本代表のアルゼンチン戦では同点ゴール、決勝ゴールと2得点を決める勝負強さも持っている。
日本代表にとってミャンマー戦、シリア戦は消化試合。それでも鈴木にとっては絶好のアピールの場であって、消化試合ではない。世間に名前を覚えてもらえるような結果を期待したい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。