「更年期障害」は閉経前後の女性特有の症状と思われがちだが、男性も「更年期障害」で悩むケースが多い。
男性の場合は、年齢に関係なく発症するとされ、特に50~60代に多くみられる。症状は長期化する場合もある。
原因は、加齢による男性ホルモン「テストステロン」の減少だ。「テストステロン」の分泌は20代でピークを迎え30代から減少していくが、その低下の度合いには個人差がある。
このホルモンは、筋肉や骨を作ったり、気力を高めるなど心身に影響を与える。「テストステロン」の減少により、「ED(勃起不全)」、疲れやすい、イライラする、なんとなく不安になる、頭痛やめまい、記憶や集中力の低下などの症状を発症する。「テストステロン」は、通称「社会性ホルモン」とも言われ、社会活動において果たす役割は大きい。分泌量が多い人ほど仲間意識や縄張り意識が強いと言われる。
そのため、分泌量が減少すると社会的に活動する気力が失われ、ストレス耐性も低くなり、休日に家にひきこもるなど日常生活にも支障をきたす場合もある。定年退職後、社会からの孤立が引き金となって、「定年後うつ」を発症するのも、この男性ホルモンと深い関係がある。
「男性更年期障害」の予防は、テニスやゴルフなどのスポーツ、囲碁や将棋といったゲームをすること。他人と競い合うことで「テストステロン」の分泌が期待できる。また、趣味に没頭したり、ボランティアなどの社会活動に参加して、充足感を味わうことも効果的だ。
「更年期障害」の症状が重い場合は医療機関の受診が必要だ。採血でテストステロン量を測定し、必要とあれば、注射や内服薬による補充療法で改善が期待できる。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。