6月9日に東京競馬場で行われるGⅢ・エプソムカップ(芝1800メートル)。今年はフルゲートの18頭が参戦してきたが、大混戦に断を下すのはズバリ、「屈腱炎」からの長期休養明け(1年2カ月ぶり)で臨む、ヴェルトライゼンデ(牡7)だ。
言うまでもなく、長期休養明けは「一度か二度、叩いてから」が競馬のセオリーだ。しかし、この常識は「屈腱炎という爆弾」を抱える馬にはあてはまらない。
屈腱炎は競走馬が宿命的に抱える、骨格などに由来するとされている。例えば、前肢が生まれつきO脚の馬は、走るたびに不自然な力が加わり、前肢がダメージを受けていく。
要するに、屈腱炎を抱える馬はいわゆる「二番、三番が利かない」、逆に言えば「長期休養明けの初戦こそ勝負」なのである。
事実、ヴェルトライゼンデは最初の屈腱炎明けで臨んだ2022年のGⅢ・鳴尾記念(中京・芝2000メートル)で、1着と激走している。二度目の屈腱炎明けで臨む今回もまた、しかり。陣営にとってエプソムカップこそが、狙いすました一戦なのだ。
しかも出馬表を見ると、人気はルメール騎乗のレーベンスティール(牡4)、岩田望来騎乗のサイルーン(騙5)の2頭に集まりそうなメンバー構成。対して長期休養明けが嫌われて人気を落とす、戸崎圭太騎乗のヴェルトライゼンデは、単勝オッズにして4倍以上は十分に見込める情勢なのだ。
ならば、同馬の単勝で勝負しない手はないだろう。人気の盲点となっている馬を探し出すには、厩舎をはじめ「走らせる側」の事情を注意深く読み切ることが肝心なのだ。
(日高次郎/競馬アナリスト)