春競馬の掉尾を飾るのは、ファン投票による宝塚記念だ。有馬記念と違って夏の祭典だけあり、ファンが望む〝最強馬の集い〟とまでは言いがたいが、それでも、ここを目標に仕上げられた生きのいいメンバーによる重厚な一戦。13頭とフルゲート(18頭)に満たないものの、なかなかの顔ぶれがそろった。
ドバイシーマCに挑んで4着に敗れたジャスティンパレス、皐月賞馬ソールオリエンス、昨年の有馬記念を制し、ドバイターフ5着のドウデュース、天皇賞・春で2着したブローザホーン、大阪杯の1〜3着馬、ベラジオオペラ、ローシャムパーク、ルージュエヴァイユといったところに人気が集まりそうだが、いずれにしても、ハイレベルで目の離せない激しい競馬が展開されること請け合いだ。
まずは過去のデータを見てみよう。03年に馬単が導入されて以降、これまでの21年間、その馬単による万馬券は7回(馬連3回)。この間、1番人気馬は5勝(2着6回)、2番人気馬は4勝(2着2回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は1回のみ。簡単なようで難解な有馬記念と同じく、比較的荒れるGⅠ戦と捉えてよさそうだ。
年齢的には、出走頭数の多さもあるが、生きのいい4歳が10勝(2着4回)、充実ぶりが目立つ5歳馬は8勝(2着10回)と、よく連対を果たしている。ただし、6歳馬も2勝(2着5回)、7歳馬が1勝(2着2回)を挙げており、6、7歳馬を軽くみるのは禁物である。
例年に比べて頭数は少ないが、力のある馬ばかり。悩むところだが、最も期待を寄せてみたいのは、ヒートオンビートだ。
7歳と峠を越えているとみられる馬で、GⅠ戦も22年の天皇賞・春で4着、昨年の有馬記念は16着と勝ち負けしたことがなく、格下と言っていい存在。なので軽くみられて当然だが、陣営が「今が旬。とにかくすばらしい状態」と、口をそろえるほどの仕上がりをみせている。目下絶好調と言っていいのであれば、十分やれるとみての狙いである。
重賞での勝ち鞍は昨春の目黒記念のみ、と実績的にも見劣るが、それでも、ここが今年3戦目で上り調子。中間の稽古内容、雰囲気がすばらしく、とにかく関係者が胸を張るように臨戦態勢は万全。1週前の追い切りも軽快かつリズミカルで、非の打ちどころがない状態にある。
「相手は一枚上で強力。それでも今のデキをもってすれば‥‥」と、友道調教師をはじめ、厩舎関係者は目を細め、ヤル気のほどをにじませる。
前走の目黒記念は59キロのハンデ頭で、しかも、勝負どころで前がふさがる不利がありながら、勝ち馬とはコンマ3秒差の7着だった。スムーズなら恐らく勝ち負けになったはずだ。
母マルセリーナは桜花賞の勝ち馬で、祖母マルバイユもGⅠ馬。血統からみても、ここで勝ち負けして何ら不思議はない。良馬場条件に一発を期待したい。
馬券的には人気どころへ手広く流しての勝負となるが、もう1頭、穴馬として注目したいのがヤマニンサンパだ。
前走の鳴尾記念(4着)は6カ月半ぶりの実戦。まだ本来の姿に戻りきっていない状態だったが、見せ場たっぷりに勝ち馬とコンマ2秒差の好内容だった。
こちらは重賞勝ち鞍がなく、GⅠは今回が初出走。ヒートオンビートよりも格下だが、この中間、大幅な良化ぶりを見せており、軽くみては断じていけない。この馬も曾祖母がGⅠ勝ち馬で、母系は北米の一流血脈。血統、走りっぷりから道悪も大丈夫だ。