「今のところ『元安芸高田市長』っていう肩書きでやっているんですけど、もうユーチューバーでもいいかなと思い始めています。ただ、このユーチューバーという肩書きを末永く使うわけにはいかない、というところです。次の肩書きをしっかりと目指しているところなんですが…」
曇天の下でそんな演説を展開したのは、東京都知事選への立候補を表明している石丸伸二氏だ。6月18日18時過ぎにJR田町駅芝浦口前で行われた街宣活動には、仕事帰りのサラリーマンなど300人ほどが集まった。
6月17日に開いた会見で「東京を動かそう」というスローガンとともに、「政治再建」「都市開発」「産業創出」の3本柱を発表。9項目の公約を順に挙げると、「都政の見える化・分かる化」「ICTを利用した民意の集約」「政策の合理化・適正化」「災害リスクへの対応」「2つのエコ(経済と環境)の両立」「多摩格差の是正」「教育の深化・進化」「外需の取り込み」「46道府県との協調・協働」となる。その全てに具体的な施策がイメージされているというが、ビラ配りを手伝った市民ボランティアによれば、
「この日は、来る人口減少社会を経済の力で好転させる必要性を『経世済民』なる言葉を用いて熱弁しました。日本の課題解決のためにも、東京都を『経済都市』として再定義させることの必要性を指摘していましたね」
2006年に京都大学経済学部を卒業するや、三菱UFJ銀行に入行。2014年にはアナリストとしてニューヨークに赴任するエリート街道を歩んでいたが、2020年7月に脱サラして広島県安芸高田市長選に立候補。見事に当選した異色の経歴の持ち主だ。先の市民ボランティアが語る。
「SMSのショート動画で、知名度が全国区になった印象です。そもそも、安芸高田市は2004年に高田郡吉田町をはじめとした複数の郡と町が合併してできた自治体。町議会から引き継がれた旧態依然とした市議会メンバーを、石丸氏が論破する姿が注目を浴びてきました。そうしたパフォーマンスばかりに目がいきがちですが、ちゃんと市民のための政策を実行しています」
最もわかりやすい例は、2024年度から小中学校の給食を無償化したことだといい、
「世帯間の格差を埋めるだけでなく、給食費にまつわる事務作業をなくすことで、教職員の負担軽減につながりました。特別な交付金やふるさと納税に頼らず、一般財源の組み換えのみで実現させたことが、他の自治体から評価されています。それでも小池百合子さん、蓮舫さん相手の選挙は劣勢だと思います」(前出・市民ボランティア)
約10分の街宣活動を終えると「ゲリラ握手会」がスタート。求められるがままに、笑顔で握手や写真撮影に対応していた。「緑のタヌキ」と「赤いキツネ」の首都決戦に割り込む「インフルエンサー市長」。勝利の女神は誰に微笑むのか。