JRA女性騎手で圧倒的なアイドル人気を獲得したのは、藤田七菜子騎手で間違いない。しかし、ここにきてその座を完全に奪いそうなのが、6月16日に京都競馬場で行われたマーメイドステークス(GⅢ)をアリスヴェリテで見事に逃げ切り、重賞初勝利を飾った永島まなみ騎手だ。
細い垂れ目で少し下ぶくれふうの癒やし系ルックスは、アイドルとして全盛期だった時代の加護亜依を彷彿させる。それでいて昨年は50勝、今年は19勝と「乗れる騎手」として認知されたことで、アイドル人気が急上昇。YouTubeにアップされた、マーメイドSの勝利騎手インタビューは、他のGⅠ勝利インタビューをはるかに凌ぐスピードで、またたく間に10万回再生に迫っている。
そんな永島が、6月30日に小倉競馬場で行われるGⅢのハンデ戦「北九州記念」(芝1200メートル)に騎乗する。騎乗馬は、自厩舎(高橋康厩舎)の9歳馬トゥラヴェスーラだ。昨年のGⅠ高松宮記念3着の実績馬だが、それが加味されて出走馬の中でも2番目に重い58キロのハンデを背負わされている。
しかも、今週の小倉競馬場は開幕週で、快速馬なら1分6秒台を出す可能性がある芝状態だ。ところが、トゥラヴェスーラは重ハンデだけでなく、脚質が追い込みであることから「買える材料はない」というのが、大方の馬券ファンの見込みだが…。
ところが、23日の宝塚記念(GⅠ)で「ドウデュース1強」に疑問を呈していた馬券師ライターは、「北九州記念で永島騎手を買える理由が3つあります」と強気なのだ。
「永島騎手は、22日の土曜日の京都競馬場で人気薄での2着が2回。とにかく今、絶好調です。この好調に乗らない手はないというのが理由の1つです。そして次に、今週の小倉方面は、雨の日が多いという予報。少なくとも、日曜日はレコードタイムが出るような快速馬場にはなりません。それに、北九州記念は毎年極端なレースになります。逃げ馬が逃げ切るか、追い込み展開になって前と後ろがドドドっと入れ替わるか。ところが今年は、一番強いと思われる松山弘平騎手のピューロマジックが逃げイチで、おそらくコレの逃げ切りが濃厚でしょう。ただし、一番強い馬が逃げ切るスプリント競馬では、追走した馬はバテることが多く、2着争いはゴール前で激しい差し合いになります。そこで、永島騎手の出番というわけです」
しかし、肝心のトゥラヴェスーラの重・不良馬場成績は「0-0―1―3」(左から1着、2着、3着、4着以下)と、馬券に絡んだのは4回中3着の一度だけだ。これで、なぜ今週買えるのだろうか。前出の馬券師ライターがほくそ笑む。
「この重馬場適性は数字のマジックです。この一度の3着こそ、13番人気で激走した昨年の高松宮記念です(当日は不良馬場)。そして、馬券に絡まなかった3回はすべて4着と好走しているんです。それぞれの人気は9番人気、16番人気、7番人気と、一歩間違えば大穴馬券の立役者になるところでした。つまり、トゥラヴェスーラはむしろ重馬場が得意な馬なんです。これが3つ目の理由ですね。今週も単勝人気は真ん中あたりでしょう。そこに女性騎手の中では馬群のさばきが上手くて、追える永島騎手ですから、買わない手はありません」
18頭立ての大混戦が予想される「北九州記念」だけに、前出の馬券師ライターが1つ懸念しているのは枠順だという。内枠を引いて、まだ芝が傷んでいないインコースから差してくるのが理想だと付け加えていた。
「競馬界の加護ちゃん」がまた魅せてくれるのか、夏競馬のスタートに注目したい。
(宮村仁)