「長い時間(遺族を)苦しめてしまった」
2021年に性被害や傷害、恐喝などの陰惨な集団イジメを受けた、北海道旭川市の中学2年の女子生徒(当時14歳)が、公園で凍死。第三者再調査委員会の委員長を務めた教育評論家の「尾木ママ」こと尾木直樹氏は、調査結果を発表するとともに、遺族に謝罪した。再調査委員会は、
「いじめが継続して(被害者を)苦しめ、死にたいという思いが何度も湧き出る中で、死を決意させたと判断することは困難ではない」
とした上で、自殺との因果関係を次のように認定。
「イジメが自殺の主たる原因であった可能性が高い」
さらには学校と市教育委員会の責任を追及した。
「対応次第では自殺のリスクを発見し、減じる要因となりえたのに、果たせなかった」
そして尾木ママは、被害少女と遺族の無念さを代弁した。
「なぜ亡くならなければいけなかったのか、遺族が抱く悲しみ、苦しみに寄り添う気持ちを大事にして調査した。解明するのに長い期間がかかり、苦しめてしまった。今後、二度とこのようなことを繰り返さない社会にしたい」
今ここで改めて責任を問われるべきは、イジメ犯罪者を匿ってきた学校幹部と市教育委員会、そして遺族を3年間にわたって苦しめてきた最初の第三者委員会メンバーだろう。
少女は問題の中学校に入学した当初から、イジメ被害に遭っていたとみられる。2019年6月に川に入る自殺未遂、そして2021年3月に凍死しているのが見つかった。
ところが2022年に提出された最初の第三者委員会の調査結果は「自殺行為に駆り立てる何らかの契機や心境の急激な変化があった可能性は高い」と差し障りのない文章が並び、「イジメとの因果関係は不明」と結論づけていた。尾木ママらの再調査委員会と比べ、大甘としか言いようがない調査結果だとわかる。
それもそのはず、問題の第三者委員会の顔ぶれを見ると、委員長は旭川弁護士会の弁護士、その他のメンバーは旭川赤十字病院の小児科医や臨床心理士、旭川市内の精神病院理事長、旭川育児院の役員…旭川市内の専門職が占めているのだ。
ここで旭川市の特別な事情に触れておく。旭川市の一等地、大通りには「開業医銀座」と呼ばれるほどに、病院がずらりと並ぶ。ほかに名物の旭川ラーメン店と酒蔵、ホテルが点在している以外、何もない。北海道庁の職員によれば、
「道北には無医村が点在しているのに対し、旭川は人口に対して異常な数の開業医が溢れ返っています。あとは観光業、製紙業ぐらいしか産業はありません。閉鎖的な市内では医師や弁護士、教師といったセンセイ稼業が幅を利かせており、当然ながら彼らは日頃からズブズブ。旭川医科大学では毎年のように、裁判沙汰が起きています」
そんな土地柄だから、被害少女に暴行、性加害した犯罪者集団、それらの犯罪行為を見ていた同級生に、医療関係者の子供が含まれている確率は高かろう。中学校の教頭は「加害者にも未来がある」とイジメ集団を徹底的に庇い、第三者とは名ばかりの利害関係ズブズブ委員会。だからイジメ加害者と被害者の自殺の関連性を、頑なに否定したのではないのか。
尾木ママだけでなく、全国から批判の声が上がってもなお、最初の第三者委員会のメンバーは旭川市と北海道のイジメ対策や不登校、自殺防止対策の専門家メンバーに名前を連ねている。こんな大人を信頼して、自傷やイジメといったセンシティブな相談をする子供など、ひとりもいないだろう。
(那須優子)