八冠陥落から11日、将棋のヒューリック杯第95期「棋聖戦」5番勝負第3局が7月1日に藤井聡太七冠の地元、名古屋市「亀岳林 万松寺」で行われ、藤井が開幕3連勝で棋聖5連覇を果たした。これで史上最年少記録となる21歳11カ月での「永世棋聖」(通算5期)資格を獲得した。
17歳で初めて獲得したタイトルが棋聖。それから最短での永世称号であり、この記録を破る神童はさすがに現れないだろう、と思われる。
その藤井七冠に期待されるのが、日本将棋連盟の羽生善治会長を超える「全タイトル永世制覇」すなわち「永世八冠」だ。
永世の称号資格は、タイトル戦によって異なる。日本将棋連盟の公式サイトを見ると、永世王位と名誉王座は連続5期もしくは通算10期保持、永世王将は通算10期保持、永世竜王は連続5期もしくは通算7期保持、などとなっている。どの永世称号でも、少なくとも通算5期のタイトル保持が必要だ。
羽生会長は2017年12月、第30期竜王戦で15期ぶりに竜王位を獲得し、通算7期の条件を満たして永世竜王の資格保持者に。同時に初の永世七冠を達成した。
一方で、2015年からタイトル戦が始まった叡王戦にはまだ「永世称号」(通算5期保持)の棋士はまだ現れていない。藤井七冠は叡王から陥落したばかりだが、「永世叡王」には最も近いポジションにいる。
叡王戦の3期4期は高見泰地七段、5期は藤井の研究仲間で数々の名勝負を繰り広げた永瀬拓矢九段、6期は豊島将之九段、7期から9期までは藤井七冠が連覇した。藤井七冠の初の永世叡王獲得まであと2期に迫っていた今期の叡王戦における、伊藤匠新叡王との激闘は記憶に新しい。
高見七段、永瀬九段、豊島九段、藤井七冠、伊藤叡王…今の将棋界を牽引している誰にでも、史上初の永世叡王を狙うチャンスはある。特に伊藤叡王には、自身のタイトル防衛と永世称号への挑戦、さらには藤井七冠の永世叡王を阻む重責がのしかかる。もちろん天才棋士2人にそんな意識はなく、見ている者が小学生時代からの因縁のライバル対決に、さらなるドラマを期待しているだけなのだが。
藤井七冠が羽生会長の永世七冠に並ぶのか、前人未到の永世八冠の偉業を達成するのか。分かっているのは、これからも藤井七冠には「マンガ超え」「アニメ超え」の壮絶な死闘が待ち受けていることだけだ。
(那須優子)