沖縄には現在も、ひっそりと「ちょんの間」が残っている。特に有名なのが、沖縄市のコザ吉原と、那覇市の国際通りからほど近い、S社交街だ。コザ吉原は2012年の一斉摘発による閉鎖後、2014年以降に市の暗黙の了解のもと、営業を再開したと言われている。
その一方で、S社交街はこれまで、特に大きな浄化作戦は行なわれていないが、置屋オーナーの高齢化などにより、その規模は年々、縮小傾向にある。現在は、かつて置屋だった平屋を改装して、バーとして再開している店舗もあり、実際に「ちょんの間」として営業しているのは数軒程度。働いているのは60代前後の年配の女性ばかりだ。ある意味、「場末のちょんの間街」として知られていたのだが…。
「それがここ最近、S社交街で若い女性が働いている、という噂があるんです」
そう語るのは、沖縄の性サービス業界関係者だ。S社交街ではこれまでにもそうした噂が何度も出たが、そのたびに警察の見回りがあり、摘発された。これには沖縄の特殊な事情が関係していると、先の性サービス業界関係者が説明する。
「沖縄では貧困に苦しむ年配女性が生活のためにちょんの間などで体を売る場合、警察はある程度は目をつむることがあります。しかし、若い女性が働くとなれば、その多くはホストの売掛金を払えなくなったなどの理由で、スカウトマンに連れてこられるケースが多い。ホストがスカウトマンに女性客を紹介して性サービス店で働かせると、反社会的勢力に金が流れるため、警察は厳しく取り締まることになります」
では現在、S社交街で働いている若い女性も、ホストクラブへの借金が原因で、スカウトマンに連れてこられたというのか。地元飲食店関係者は次のように指摘する。
「おそらく、そうでしょう。年々、警察の監視が厳しくなっており、スカウトマンがホストと結託して女性を性サービス店に紹介することは違法とされ、逮捕されるケースは増えています。これまで、スカウトマンが女性を紹介する性サービス店は、那覇市内の特殊浴場が一般的でした。しかし、スカウトマンが女性を紹介すると、店自体が摘発される可能性があります。特殊浴場は一度廃業すると再び営業許可を得ることはできません。そのため、最近ではスカウトマンの紹介を拒否する店が多くなっています」
つまり、特殊浴場で働けない女性が、スカウトマンによってS社交街の「ちょんの間」に連れてこられた、ということになる。しかし過去の事例のように、警察の手が伸びるのも時間の問題。ホスト、スカウトマン、性サービス店の資金の流れは都内から地方へと移り、警察との攻防は新たなステージを迎えている。