WBA、IBFの世界スーパーフライ級王座統一戦で、WBA王者の井岡一翔が5年7カ月ぶりの黒星を喫する「まさか」が起こってしまった。
相手のフェルナンド・マルティネスは無敗で、戦前から井岡のこれまでの対戦相手に比べて「強敵」との評判だった。それでもホームである日本で戦える有利さと、圧倒的なディフェンス力で、最終的には井岡が封じると見られていた。ところが、
「計量後にどれだけ体重を戻したのかはわかりませんが、マルティネス選手は2階級ぐらい大きく見えました。そして、左フックと右アッパーが想像以上のスピードで、ファンが『こんなに打たれる井岡は見たことがない』というほど、顔面にパンチをもらいましたね。スポーツメディアの多くは判定なら井岡が勝つと予想していただけに、マルティネスにフルマークを付けるジャッジさえいたという一方的な判定には、言葉を失った人たちが多かったようです」(スポーツライター)
とはいえ、井岡のキャリア上で例がないほどの被弾数ながら、一度もダウンすることなく、最終ラウンドには相手を倒しに行く気迫を見せた。この姿にファンは感動した。試合直後は「最高の試合でした」「ヘンな相手じゃなくて本当に強い相手に負けたんだから誇るべき」「誰が何と言おうと井岡は名チャンピオン」と、労いと称賛の声がやまなかった。
しかし、SNS上のそんな空気を一変させる事態が、判定が発表された数分後に起きてしまったのだ。週刊誌ライターが状況を振り返る。
「井岡はリングを降りたあと、いろんな方に頭を下げていました。ところがその中で、なんとリングサイドで見ていた歌手の長渕剛に抱きしめられ、井岡が長渕の肩に顔を埋めるシーンが映し出されたんです。これが、井岡に拍手を送っていた人たちをあ然とさせました。井岡を労う気持ちが、スーッと一気に醒めてしまったようなんです」
井岡と長渕の蜜月は今年2月、あるメディアでの対談がきっかけのようだ。「夢のような時間だった」と、井岡が自身のインスタグラムで語っている。前出の週刊誌ライターが続ける。
「今回は井岡が招待したのでしょう。しかし、長渕といえばかつては野球の清原和博氏と師弟関係からの絶縁、その後に清原氏の薬物逮捕があったことで、『清原を見捨てた男』としてスポーツファンからのイメージは決してよくはありません。しかも、先頃は女優からの性被害告発で、『N渕』というイニシャル報道が衝撃的でした。井岡は井岡で、タトゥー問題やドーピング疑惑で日本ボクシング界とバチバチだった経緯がありますから、長渕に抱きしめられる姿を見て『なぜに長渕?』『まさに類トモ…』『やっぱ井岡は取り巻きが悪い』と、試合への称賛から一転、悪い時期のイメージに逆戻りしてしまったかのようなコメントがあふれてしまいました」
どうやら、今回の井岡と長渕の男と男の友情シーンが、かつての清原と長渕の蜜月時を多くのスポーツファンに思い出させてしまったようだ。
それでも、8日の統一戦が見ている者を熱くする名勝負だった事実は揺るがない。井岡の去就は未定だが、どういった決断を下そうと日本ボクシング史に残る名チャンピオンに拍手を送りたい。
(飯野さつき)