函館競馬の最終週を飾る函館記念は、ハンデ戦。今年で60回目となる伝統の一戦だが、よく荒れる波乱含みの重賞として知られる。
何しろ02年に馬単が導入されて以降、これまでの22年間で、馬単による万馬券は半数以上の12回(馬連で5回)。4年前には15番人気、13番人気、3番人気の順で決着して3連単343万円の大万馬券が飛び出すなど、とにかく一筋縄では収まらない重賞だ。
その過去22年間で1番人気馬は4勝(2着4回)、2番人気馬も4勝(2着2回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は3回あるものの、それ以外は大きく荒れるとデータは示しており、我ら穴党にとっては力の入る一戦である。
そもそも函館記念は、馬単が導入される前から荒れるレースだった。今と違って昔の北海道競馬は開催期間も長く、札幌開催の方が先。現在、日刊紙の記者は長くて2週間ほどの出張となるのだが、以前は札幌1カ月、函館1カ月と、2カ月間に及ぶ長期出張は当たり前だった。
若ければ、夜のすすきのあたりで羽を伸ばしたいだろう。となれば懐具合が悪いようでは話にならない。これは函館にいても同じこと。潤沢と思えた出張費、取材費は、気がつけば底をついていた、なんてことはよくあることで、注意はしていたつもりでも宿代が1週間分ほど足りなくなってしまうケースもあった。そうした際は、謹厳実直な記者に頭を下げることになるのだが、そして残ったわずかな資金を荒れると踏んだレースにつぎ込むのだ。
もし空振りとなれば借金の山となるが、不思議なもので、この函館記念で起死回生の一打をかましたことが何度かある。
30年以上前の話だが、1993年8月22日、宿代を払ったら馬券を購入するお金がなくなり、仲のいい他社の記者に泣きを入れて5万円ほど借りた。
私の本命は7番人気のモンタミール。そこから馬連で何点か流したところ、モンタミールがハナ差の2着。勝ったゴールデンアイは11番人気で馬連の配当は1万4740円だった。帯封とはいかなかったが、借金をすぐに返し、丸1日豪遊して帰路に就いたことを今でもよく覚えている。
そんな思い出深い重賞でもあり、穴党として食指が動く馬も多いだけに、普段よりも力が入るところだ。
悩ましいが、最も期待を寄せてみたいのはマイネルクリソーラである。
前走の新潟大賞典は4番人気で7着。レース前、手塚調教師は「さすが力のある馬。いい状態で臨めるし勝ち負けになっていい」と期待していたが、結果は伴わなかった。しかし、これで人気が落ちるようなら穴党としてはしめたものだ。
そもそも前走は、転厩初戦であり、前々走の中山記念(5着)から間隔が2カ月以上開いていた。陣営としては馬の個性や特徴をつかみきれていなかったとみたい。
1週前の追い切りは、パートナーを追いかけ、しまい一杯に追ってやっと併入したもので、手塚師は「もたもたした動きで前走の方がよかった。このひと追いでどこまで変わってくれるか」と、控えめのコメントだった。
だが、軽くみるべきではない。もともと稽古駆けするタイプではなく、その翌日に函館へ輸送されたわけだが、これで気合いが乗ってくれるとみている。
函館は〈1 1 0 0〉と相性がよく、4勝のうち3勝を2000メートルで挙げているように距離もピッタリ。ハンデは恐らく56キロ止まり。勝負強くて相手なりに走る馬でもあり、晴雨にかかわらず勝ち負けとみる。