双子においては、どちらか一方が体に不調を訴えると、不思議なことに、もうひとりにも同じ場所に異変が現れることがある、という話を耳にする。
1963年4月11日にカリブ諸島のバルバドスで生まれた、ギボンズ家の一卵性双生児の双子姉妹、ジューンとジェニファーも、小さい頃からそんな不思議な体験を幾度もしてきた。
2人は幼い頃から自分たちだけに通じる「双子語」という言語を持ち、どこへ行くにも、何をするにも一緒。見かねた両親が何度も2人を引き離そうとするも、そのたびに姉妹は泣き喚いて激しく拒否する。ついには両親とほとんど会話をしなくなり、2人だけの世界に閉じこもるように、心を閉ざしてしまった。
その後、一家はイギリスに移り住むが、当時この村で暮らす黒人家族はギボンス家だけ。学校に馴染めない2人は、イジメや嫌がらせの対象になった。
そこで両親は、2人を別々の全寮制の学校に通わせることにしたのだが、どういうわけか、18歳になった2人が夢中になったのが、同じ男だった。
男は札付きのワルで、彼女たちは男の気を引くため、ドラッグや酒に溺れ、やがて窃盗や放火といった犯罪に手を染め始めるように。ついには逮捕・起訴されてしまう。
2人は精神に障害のある犯罪者が収容される「ブロードモア高度保安病院」へ送致され、11年にわたってこの施設で暮らすことになるのである。世界の猟奇事件に詳しいジャーナリストが語る。
「本来なら2年か3年で出てこられるはずのこの施設に、11年も収容されていたことには理由がありました。それが姉妹の素行であり、2人は犯罪に手を染めるだけでなく、『一人で生きるには、もう一人を殺すしかない』と、姉のジューンが電話線で妹の首を絞めたり、逆に妹ジェニファーが姉を川で溺れさせるなど、互い傷付け合ったのです。当時の新聞は『世界最恐のサイコパス双子』と、センセーショナルな大見出しを付けて報道。当時イギリスで最も劣悪だとされた、『犯罪狂人収容所』とされる施設に収監されてしまうのです」
その後の1993年3月、2人は別の施設に移送されることになるが、その途中で妹のジェニファーが急性心筋炎により死亡。遺体からは薬物や毒物反応は出ず、ジューンの日記には「これで自由の身になった。ジェニファーが私のために命を諦めた」と記された。姉による他殺説も出たようだが、直接の死因は特定できずじまいだった。
「2人はテレバシーで会話ができたため、姉が妹を暗示にかけ、死に至らしめた、あるいは呪い殺した、といった噂が流れました。証拠を示すようなものは何も出てこなかったそうですが」(前出・ジャーナリスト)
翌1994年9月、2人の物語はイギリスBBCで、ドキュメンタリーとして放送された。
(ジョン・ドゥ)