日本時間の7月17日、MLBオールスター「ア・リーグ×ナ・リーグ」(グローブライフフィールド)は淡々と試合が進んでいた。
NHK総合での生中継、その解説者で元MLBプレーヤーの長谷川滋利氏が「みんな早打ちですね」と、少しガッカリしているかのようなコメントをしていた。
両リーグ2回の攻撃まで、場内はまったくと言っていいほど盛り上がらないままだった。
ところが3回表、無死からナ・リーグのプロファー(パドレス)がライトへのヒット、マルテ(メッツ)が内野安打で出塁して、バッターは初回に四球を選んだ大谷翔平。
ア・リーグ投手のホウク(レッドソックス)はやはりストライクが入らない。カウント2―0からの3球目、真ん中低めのストレートを大谷が狙い撃ちしたかのようにバットを振り抜くと、打球は一気にライトスタンドへ。MLBオールスター初となる、日本人プレーヤーの〝さく越え〟第1号となったのだ。その時の様子を野球記者が話す。
「まさに場内がどよめいた後、静まり返りました。開催地がテキサスでア・リーグの本拠地だったためか、大谷の名前がコールされてもさほど歓声が上がらなかったことが印象的でしたが、あとから考えると、最大の敵としてのリスペクトだったんでしょう。3ラン後のどよめき、そして一気に静かに。つまり『やっぱり凄い』と、心の中で歓声を上げていた気がします」
また、大谷のホームランにMLBが確実に感謝しているはずだと、この野球記者は続ける。
「一歩間違うと〝塩試合〟の様相を呈していました。打者が早めに振って内野ゴロの山…といったような。ところが、大谷のライトが動けない〝打った瞬間〟の一発で、選手全員の目が覚めましたね。途端にア・リーグが3点を返して追いつき、場内のボルテージが上がり、一気に名勝負の雰囲気が出てきました。MVPが獲れるかはわからなくなりましたが、試合が盛り上がったのは誰もが大谷のおかげと感じいることは間違いないでしょう」
今永昇太(カブス)も4回に4番手として登板し、1回を三者凡退とパーフェクト投球を見せている。夢の舞台での日本人選手の躍動が、オールスターを大いに盛り上げたのだった。