昨年5月に感染症法上の位置づけが2類相当から5類へと引き下げられた、新型コロナ感染症。その後、国内では2度にわたる流行(第9波と第10波)が見られたが、感染拡大に対する警戒感は、時を追うごとに薄れつつある。
しかし、新型コロナは本当に「恐るるに足りない感染症」となったのか。
実は今、新型コロナの感染者数が10週連続で急増の兆しを見せ始めている。しかも多くの専門家が「感染者数は数週間単位で『倍々ゲーム』で増えていく」「今回の第11波は5類移行後の『最大波』になる」と不気味な警鐘を鳴らしているのだ。
懸念されているのは、第11波の主流株とされる、複数の「新変異株」の存在だ。
KP.3株をはじめとするこれらの新変異株は、変異前の各種オミクロン株に比べていずれも感染力が格段に高いだけではなく、体内に侵入したウイルスを退治する抗体から容易に逃れる性質を持っていることがわかっている。
中でも後者の性質は、大きな脅威となる。つまり、これまでの感染やワクチン接種で獲得した免疫が、ほとんど役に立たないのだ。
専門家の一部からは「新変異株の重症化率は、オミクロン株と変わらない」との声が上がっているが、この手の指摘は「木を見て森を見ず」の危ないレトリックである。重症化率は従前株と変わらなくとも、母数となる感染者数が倍々ゲームで増え続けていけば、重症に陥る患者数と死者数は急増していくからだ。
事実、多くの専門家が口を揃えて「現在は第11波の入り口にすぎない。今後、母数となる感染者数は指数関数的に激増していく」と警告しているのである。
天災は忘れた頃にやってくる。新型コロナをナメてはいけない。
(石森巌)