プロ野球前半戦最後の試合となる7月21日、広島カープは甲子園での阪神戦に12失点で大敗。2018年以来6年ぶりの首位ターンとならずも、巨人と1ゲーム差の2位で前半戦を折り返した。
7月3日以来の先発となった広島先発の九里亜蓮が3回に突然崩れ、6点を献上。登板間隔が空いたことでリズムに乗れず、いつも通りの投球をすることができなかった。
一方で後半戦に向けて、嬉しい新戦力が台頭した。長谷部銀次がプロ初登板を果たし、1回無安打無失点の好投を見せたのだ。長谷部は10点ビハインドの7回に矢崎拓也からバトンを受けると、先頭の木浪聖也を直球で空振り三飛に。続く梅野隆太郎には四球を与えたが、代打・豊田寛を三ゴロに仕留め、5-4-3のダブルプレー。最速148キロをマークした。
長谷部は慶應大学野球部から社会人野球の強豪トヨタ自動車に入社。2022年のドラフトで広島から6位指名を受けて入団した。広島からトヨタの選手が指名されるのは栗林良吏、高校・大学の先輩・中村健人に続き、3年連続となった。
特筆すべきはそれだけではない。長谷部の祖先は日本人なら誰もが知っているあの「偉大な人物」だったのだ。
母方の祖先は、江戸時代の蘭学医・杉田玄白。言わずと知れた解剖学の書「解体新書」を訳した歴史的人物である。実は長谷部が指名を受けたドラフト会議の日は、偶然にも玄白の誕生日で、本人は「8世代上です。不思議な縁を感じました」と語っている。
速球派の左腕はどの球団も、喉から手が出るほど欲しい人材。広島は森浦大輔、黒原拓未、堀江敦也、ハーンなど左の中継ぎ陣が充実しており、さらにそこに1枚、長谷部が加わったことで、12球団トップクラスの左腕王国を築いている。
祖先は教科書に載る蘭学者、さらに父親は世界中を飛び回って研究する植物学者だという長谷部。大学時代は文系タイプで、面倒見がいいことから、チームメイトから「委員長」と呼ばれたとか。将来は「ピッチング解体新書」を紐解きながら、投手陣を引っ張る存在になるかもしれない。
(ケン高田)