アメリカ大統領選で現職のバイデン大統領がついに撤退を表明するなど民主党が混乱し、共和党のトランプ前大統領が11月の決戦で大統領に返り咲く可能性が高まっている。そしてこの状況を歓迎する日本の政治家がいる。自民党の茂木敏充幹事長だ。
9月の総裁選への出馬意欲を隠さない茂木氏だが、「1%の男」と呼ばれるほどに、その支持率は低迷している。そうした劣勢を挽回するのに「トランプパワー」を利用したい、との思惑が透けて見えるのだ。
茂木氏は7月20日、新潟県長岡市で講演した際に、
「まだ確たる結果は言えないが、今のアメリカの雰囲気は『ほぼトラ』から『確トラ』に近くなってきている」
との認識を示した。まだバイデン氏が撤退を表明する前の発言であり、他国の選挙の行方についてここまで踏み込んで言うのは異例のことである。
それだけ茂木氏は、トランプ氏の再登板に期待しているといえる。茂木氏は安倍晋三政権下で、経済再生担当相として日米貿易交渉をまとめ上げ、当時大統領だったトランプ氏から「タフネゴシエーター(手ごわい交渉相手)」と呼ばれた。その自信からか、講演では次のように語っている。
「日米2国間の問題にはうまく対応できる。トランプ氏が何に関心を持っているかを正しく分析することが必要だ」
このままでは総裁選への出馬すら難しいとされる茂木氏だが、「トランプと立ち向かえるのは自分しかいない」とのアピールがどこまで党内に浸透するか。コンサルタント出身として、腕の見せどころといえよう。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)