政治

ホントーク〈鈴木洋嗣×名越健郎〉(3)今のリーダーは「二軍の政治」だ

名越 これから日本を正常な状態に戻すには、どうすればいいのか。本書では一つの処方箋として「医療財政改革」を提案されていますね。

鈴木 ワンノブゼム(多くある中の一つ)ですが、そこは避けられないと思います。国民皆保険はすばらしいし、保険料で維持できるなら何の問題もないですけど、国債という借金で何とか穴埋めし続けるのは、現実的に無理があります。

名越 要は医療の自己負担を増やすか、保険料の大幅増額でしょうけど、政治家は選挙があるから、なかなか言い出せませんよね。

鈴木 先進国の多くは財政のチェックをシステム的にやっています。日本もそうした制度を導入するべきかもしれませんが、問題は、そんな決断をできる腹の据わった政治家がいるかどうかです。

名越 本書で今の日本のリーダーを「二軍の政治」と書かれていますが、まさにそうだと思います。

鈴木 かつての田中派所属の政治家は格が違います。頭もいいし迫力があった。昨今の「裏金事件」など、まさに二軍のやりそうなことじゃないですか。田中派の政治家は、もっと危ない橋は渡っても、あんなセコいことはしませんでしたよ。

名越 鈴木さんから見て、日本を任せられる次代の政治家はいますか?

鈴木 優秀な人はいます。個人的に応援もしていますけど、その人が権力を握れるかどうかは別の問題。今後、どんな仕事をしていくのか、チェックしていきたいと思っています。

名越 政治の監視はメディアの重要な役割ですから、どんどんやってほしいのですが、鈴木さんが政権構想の作成にも関わっていたことを多くの人が知ることで、政治批判をしにくくなることはありませんか。

鈴木 そんなことはまったく考えていません。それは政治家側も同じで、菅さんや安倍さんから「文藝春秋」の報道に圧力がかかったことは一度もありません。

名越 鈴木さんは昨年、その「文藝春秋」を退社してシンクタンクを立ち上げられました。これからは政治とどう関わる予定ですか。

鈴木 実は不祥事が多発して以降、官僚と経済界の繫がりがなくなりました。政治家も役人や経済界の人を集めることをしなくなった。できれば、そういう人の集まる場を提供したいと考えています。

名越 ぜひ、頑張ってください。期待しています。

鈴木 ありがとうございます。

ゲスト:鈴木洋嗣(すずき・ようじ)1960年、東京都生まれ。84年、慶應義塾大学を卒業、株式会社文藝春秋入社。「オール讀物」「週刊文春」「諸君! 」「文藝春秋」各編集部を経て、04年から「週刊文春」編集長、09年から「文藝春秋」編集長を歴任。その後、執行役員、取締役を務め、24年6月に同社を退職し、シンクタンクを設立。

聞き手:名越健郎(なごし・けんろう 拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「独裁者プーチン」(文春新書)など。

カテゴリー: 政治   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
3
暴投王・藤浪晋太郎「もうメジャーも日本も難しい」窮地で「バウアーのようにメキシコへ行け」
4
侍ジャパン「プレミア12」で際立った広島・坂倉将吾とロッテ・佐藤都志也「決定的な捕手力の差」
5
沖縄・那覇「夜の観光産業」に「深刻異変」せんべろ居酒屋に駆逐されたホステスの嘆き