主人公の少女エミリーは、ガレージセールで見かけたアンティークの木箱をひと目で気に入り、父にねだって買って帰る。ところがその木箱を手にした直後から、彼女の様子は一変。周囲では蛾が大量発生したり、怪死事件が起きるなど、不吉な現象が多発した。
父親のクライドが知人の大学教授に相談すると、木箱の正体はなんと、ホロコーストの生存者が所有していた「悪魔を封じ込めた箱」だったことがわかって…。
そんなストーリーが展開されるのが、2012年に公開され、観客を恐怖のドン底に突き落とした米ホラー映画「The Possession」だ。
実はこの映画に登場する木箱「ディブク箱(Dybbuk box)」は実際にアンティーク家具として存在するもので、幾度か売買された後、現在は米ネバダ州ラスベガスにあるお化け博物館「ホーンテッド・ミュージアム」に収蔵されているという。
ディブクとは、東欧のイディッシュ文化において信じられてきた悪魔憑きを行う悪霊のことで、ヘブライ語で「しがみつく」という意味を持つ。この木箱はもともとワインを保管するために使われていたものだが、ユダヤの民間伝承では、箱の中には人間に憑依する悪霊が閉じ込められているため、絶対に開けてはならない。つまり、呪われた禁断の箱だったのである。
実在するディブク箱は多くの所有者を経て、2001年にオークション・サイト「eBay」に出品され、最終的に「ホーンテッド・ミュージアム」に辿り着いた。事実、この箱に触れたことで災難に見舞われた者は多く、2ndアルバム「Beerbongs&Bentleys」が2019年のグラミー賞で4部門にノミネートされたポスト・マローンも、そのひとりだとされる。
2018年6月に「ホーンテッド・ミュージアム」を訪れた彼は、オーナーから冗談半分に、透明アクリルカバーに覆われている箱に触れてみるよう促され、間接的ながら箱に触れてしまったという。
すると1カ月後、なんと彼が所有する自家用機がトラブルにより緊急着陸するアクシデントが発生。その後も乗っていた車が自動車事故に巻き込まれ、さらには留守中にロサンゼルスの自宅に3人の武装強盗が押し入る事件まで。
3件とも1カ月以内に起きたことで、これは偶然として片付けられないとなり、この事件をきっかけに、ディブク箱伝説が改めて世界に広がることになった。
ユダヤ人コミュニティーでは現在もなお、ディブクのような悪霊や呪いの力が信じられているという。はたして禁断の箱に秘められたものとは…。
(ジョン・ドゥ)